なりゆきまかせ
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スプーンですくって口に入れると、まだ熱っぽい体にひんやり気持ち良かった。
「おいしい…」
「よしよし。
銀さん、今から薬買って来るから、ゼリー食べながらちょっと待っててェ」
「あ、すみません…」
「あー、そういう他人行儀なのナシで。俺ら家族も同然てゆうか、茜は俺の嫁みたいな?」
「いや、ちがうし」
私の話を聞いているのかいないのか、口の端を上げてニヤリと笑った坂田さんに、ちょっとだけドキッとした。
いやいやいや。
家族とか嫁とか言われて、甲斐甲斐しく世話焼いてくれて、なんか新婚みたいキャッ☆とか思ってないからね。
坂田さんが出かけるのを見送ろうとしたら。
「げ」
「万事屋…!!」
玄関から聞こえてきた二人の声に、なんだかもう、ものすごく嫌な予感しかしない。
玄関に顔を出すと、そこには睨み合う坂田さんと土方さんがいた。
「何しに来たんだ、テメー」
「テメーこそ何してんだ。小野が具合悪いのにつけ込んで、手ェ出そうとしてんじゃねぇだろうな、あァ!?」
「そんなもんにつけ込まなくても、茜はもう俺のモンだっつーの。処女もらうのも時間の問題みたいな?」
「ハアァァ!? テメーみたいないい加減な男に小野を渡せるか!!」
「いやいやいや。渡すも何も、お前のモンじゃねーし。
てゆーか、副長さんのお仕事はいいんですかァ? こんなとこで油売ってていいんですかァ?」
「見廻りの帰りに寄っただけだし。どっかのヒマな天パと違って、ちゃんと仕事終わってから見舞いに来たんだよ!」
「え、天パ? ヒマな天パって俺のこと?
でも残念ながらヒマじゃねーし。今日だってちゃんと仕事してきたし」
「たまたま仕事だっただけだろうが」
「あの…」
これ以上言い合いされちゃかなわんと口を挟むと、二人が同時に私の方を見た。
「あの、そろそろ止めてもらえます? お二人の仲がいいのは十分に分かったんで」
「「仲良くねェし!!」」
息ピッタリじゃん、仲良しじゃん…。
まだ睨み合う二人に再び声をかける。
「それで、土方さんはなんでここに?」
「あァ!?」
「どど、瞳孔開いてますよ!?」
「……悪ィ。
俺は総悟に聞いてきた。小野が具合悪いみたいだから、一人じゃ不便だから屯所で面倒見てやったらどうだって」
「総悟くんが? 怪しくありません?」
あのドS王子がそんな優しさ見せるなんて、何か企んでるとしか思えないんですけど。
「まあ、アイツだって人の子だ……たぶん。
純粋な優しさだ……たぶん」
「たぶんたぶんて…」
「あんな野獣の巣に茜を連れて行かせるか!!
あのドS王子が優しさ見せるなんて、裏で何か企んでるに決まってんだろ! 同じドSだから俺には分かるもんね!」
「ということは。
坂田さんがこんなに優しいのは、何か企んでるってこと?」
「え!? なんでそうなるの!?」
「あーそれじゃあやっぱりここに女一人で置いとけねェなあ!
こんなドSがそばにいたら、お前も体休められねェだろ。てことで、屯所に連れて行くから準備しろ」
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