なりゆきまかせ
□09
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だるさで重い体を引きずって帰ると、玄関の前に総悟くんがいた。
渡した覚えのない合い鍵で、家に入ろうとしていたようだ。
「……おまわりさん呼びますよ」
「俺がおまわりさんでィ。なんだ、今日はサボりか」
「違います、誰かさんと一緒にしないで……」
総悟くんの横を通り抜けて家の中に入る。
当たり前のように、総悟くんが後ろからついてくるのはなぜですか……。
「オイ、茜。お茶」
「すんません、セルフサービスで……」
早く横になりたくて、すでに茶の間でくつろいでいる総悟くんを無視して、押し入れから布団を引っ張り出した。
「オイオイ、昼間からヤル気かィ?」
「ヤルんじゃなくて寝るの。私、具合悪くて仕事早退してきたんだからね……。
なので、なんのお構いもできませんけど」
「チッ。せっかく御主人様が来てやってんのに」
「いや、私あなたの奴隷になった覚えないんですけど!!
具合悪いって言ってんのにひどい……。本当にしんどいんで寝ます……」
羞恥心よりもしんどさが勝って、総悟くんが見ているのにも関わらず着物を脱いで襦袢になって布団に潜り込んだ。
「お前な……ちった恥ずかしそうな顔して御主人様を悦ばせろィ」
「無理……てゆうか、寒い……。
あ、土方さんに見つかっても知らないからね……」
みの虫のように布団にくるまって数分後、私は眠りに落ちていた。
「コイツ……本当に俺にかまわず寝やがった」
眠っている茜の額に手の平を当てる……確かに熱い。
「ん……寒……」
起こしたかと思ったが、うわごとのようだった。
隊服の上着を脱ぐと、茜の横に潜り込む。
寒いのか、ガクガク震える彼女を優しく抱き込んだ。
「う……ん……」
温もりを求めるように、自分にすり寄ってくる茜の髪に、そっと口付けた。
その時、幸せな静寂を破るように携帯電話の着信音が響いた。
マナーにしておかなかったことを悔やむがもう遅い。
「チッ」
舌打ちして上着のポケットから携帯を取り出すと、液晶画面には「土方」の文字が。
通話ボタンを押した瞬間、土方のヤローの怒鳴り声が聞こえてきた。
「あーもー、そんなガミガミ言わなくたって聞こえてまさァ。
今? 茜の家……」
言った瞬間、またガーガーと怒鳴る声。
「分かりやした、今行きますよ。死ね土方」
ピッと通話を終了する音。
具合の悪い彼女を置いていくのは気にかかったが、このままサボるとあのマヨネーズ男がうるさい。
「悪ィ……またな」
もう一度、今度は額に軽く口付けると、静かに家を出て行った。
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