番外編

□二月:バレンタインデー。
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 寒さも厳しい冬の土曜日――

 屯所に入ると、なんだか少しいつもと空気が違うような気がした。
 会う隊士さんがみんな一様にニコニコして、心なしかソワソワして。
 そして、何より。

「みんながいつもより優しいんだけど、なんで?」

「え」

 洗濯物を干しながら、手伝ってくれていた山崎さんに聞いてみた。
(ちなみに、山崎さんは手があいている時はいつも手伝ってくれる)

「なんでってそりゃあねぇ……」

「みんな、何か浮き足立ってるっていうか。いつも以上にニコニコして、いろいろ手伝ってくれるんですよね」

「だってホラ、もう二月じゃん。二月といえば、なイベントがあるでしょ」

「二月……、節分?」

「そうなんだけど。
 もっとこう、男女がドキドキワクワクするイベントだよ!」

「ドキドキワクワク……」

「二月といえばバレンタインでしょ。
 みんな茜ちゃんからチョコレート貰うの楽しみにしてるんだよ。義理でいいから、配ったらいいんじゃない?」

「あー、そっか」

 だから、みんなソワソワしたり優しかったりしたんだね。
 チョコレート欲しさに今だけそんなんされても、女の子は逆に引かないんだろ
うか。
 まあ、私も一社会人として義理は果たすつもりだけども。

「義理チョコかぁ……。
 ……山崎さんは義理アンパンでいいよね?」

「義理アンパンてなに!?
 バレンタインはチョコがいいよ! いや、チョコ下さい!」

 必死に訴える山崎さんに、はあ考えときます、と返事はしておいた。

 バレンタインか……。
 一体何人分用意すればいいんだろうか。








『二月某日』

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