なりゆきまかせ
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ヘドロの森の店先で鉢の花に水を上げていると、なんだか少し背筋が寒くなった。
「茜さん」
店の奥から顔を出したのは、店主のヘドロさん。
いつ見ても恐ろしいご尊顔です……。
さっきの寒気はヘドロさん……のせいではないよね?
「はい、なんでしょう?」
「なんだか少し顔色が悪いような……」
見た目からは分かりにくいけど、恐らく心配顔のヘドロさんにそう言われて、そういえば……なんか気分悪いというか寒気がひどいというか。
アレ? もしかしてコレ風邪の引き始めじゃね?
「そう言われれば、なんだか寒気が……」
「体調がひどくなる前に帰られた方がいいんじゃないでしょうか。
店は私一人でも大丈夫ですから……」
ヘドロさんがあまりにも心配そうに言うから、お言葉に甘えて早退させてもらうことにした。
家に帰る途中、万事屋の前を通ると、ちょうど三人が出かけるところだった。
「茜! 今日は休みアルか!?」
「うーん……ちょっと調子悪いみたいで、早退させてもらったの」
「そういえば、少し顔色が悪いような……」
「どれどれェ?」
坂田さんの伸ばした右手が、避ける間もなく私の後頭部を引き寄せた。
コツンとくっつく私と坂田さんの額。
「熱はねぇか?」
坂田さんの死んだ魚のような目が間近にある。
「あー……たぶん、これから上がる……と思います……なんか寒いし」
てゆうか、こんなんされたら熱なくても出るんじゃないだろうか。
おでこコツンのダメージを回避すべく、坂田さんの顔を見ないように視線を明後日の方に向ける。
こっちの心境を知ってか知らずか、坂田さんはすっと離れた。
「こりゃあ熱上がる前かもなぁ。んじゃ、これから銀さんが一緒に行って添い寝であっためて……」
「銀さん! ボクたちはこれから仕事ですよ!」
「銀ちゃんがそばにいたら、茜がゆっくり休めないアル!」
「えー……」
「私は大丈夫なんで、三人は仕事行ってください」
「んじゃ、仕事終わったら行ってやっから。あったかくして寝てなさい」
「いや、あの、来なくても……」
「ほら、行きますよ!」
「茜、行ってくるアル!」
「うん、行ってらっしゃい……」
坂田さんは新八くんと神楽ちゃんに引きずられて仕事に出かけて行った。
本当は、坂田さんが来てくれるって言ったの嬉しかったけど、そこまで甘えるのは悪いから……。
私は一人には慣れてる。
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