なりゆきまかせ

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 ここ最近、巷ではカブト相撲なんてものが流行っているらしい。

 夕飯の後で食べようと、和菓子屋さんでわらび餅を買って万事屋へ帰ると。

「キャホォォォ!!」という歓声を上げて、神楽ちゃんが飛び出してきた。

「な、なにっ?」

「あ、茜おかえり!
 私いまから明日のおやつ買いに行ってくるアル!」

「へ? おやつ?
 よく分かんないけど、行ってらっしゃい」

 ものすごい速さで駆けていく神楽ちゃんを呆然と見送る。

 アレ?
 てゆうか、あの子いま虫取り行く格好してたような?
 あんな格好で買い物て……なんで?

「ただいま帰りましたーっ」

 冷蔵庫にわらび餅をしまって居間をのぞくと。

「カブト狩りじゃあああ!!」

 鼻にティッシュを詰めた坂田さんが、せっせと荷造りをしていた。

「茜さん、お帰りなさい」

「ただいま、新八くん。仕事の依頼?」

「いえ……その――」

 新八くんから事情を聞いて、ああ……と思い出す。
 カブトムシ取りに行って、将軍様のペットがどうのこうのってやつか。

「坂田さん、私もついてっていいですか?」

「あん? でも、明日はヘドロの森だろ」

 風呂敷にあれやこれやと詰め込んでいる坂田さんに尋ねると、そう応えが返ってきた。

「お休みもらってきます。ダメですか?」

「別にいいけど。
 人数多い方がいっぱい取れそうだしィ」

「んじゃ、ちょっとヘドロさんち行ってきます」

 明日持って行く物を買いに行かないと、と考えながら外に出る。

 カブトムシ取りにはちょっと自信がある田舎者なので、腕が鳴りますなぁ。
 目指せ、家計の足し!!

 傍から見たら怪しいだろうなと思う笑みを浮かべつつ、ヘドロの森に向かった。





















「かぶと狩りじゃああああ!!」

「カブト狩りじゃああ!!」

 緑深い森に、坂田さんと神楽ちゃんの雄叫びが響き渡る。
 二人の後ろを、呆れ顔の新八くんと並んでついていく。

 狩って売りまくるという二人に、「なんでこうなるの?」とぼやく新八くん。

「あはは……まあ、もしかしたら一獲千金狙えるかもしれないしね?」

「そううまくいきますかねぇ……」

「だよねぇ……」

 新八くんと不安げに顔を見合わせる。
 私たちの心配をよそに、坂田さんはテントをはり始めていた。

「よし、ここを宿営地にする」

 キャンプ感覚ではしゃぐなよ、とか言いながら神楽ちゃんとはしゃいだ内容の言い合いをしている。

 ……ビジネスとか言いながら楽しそう。

「残念でしたァ、酢昆布はオヤツの内に入りません〜」

「入りますぅ、口に入るものは全てオヤツですぅ、ジュース類も認めません〜」

「いいアルか、そんな事言って。私、銀ちゃんと茜がこっそり水筒にジュース入れてきてるの知ってるんだからネ」

「え!?」

「あれはポカリじゃありません〜、ちょっとにごった水ですぅ」

「わ、私のはカルピスじゃありません〜、ちょっと牛乳が混ざった水ですぅ」

「お前ら、森に飲み込まれてしまえ」

「し、新八くん……!」

 あああ〜……新八くんの視線が冷たいぃぃぃ!
 浮かれてるのバレたぁぁぁ!

 てゆうか、みんなに見つからないようにこっそりカルピス入れたのに……(神楽ちゃん目ざとい……)

「なに、茜ちゃんカルピス持ってきたの?
 言ってくれれば、いつでも銀さんの濃いカルピス飲ませてあげるのにィ」

「坂田さんのカルピス?」

「かなり溜まってっから、濃くて苦いかもなァ」

「? カルピスって甘いものでは?」

「いや、だからね?
 カルピスってのは例えで、つまりは銀さんの精え」

「いいかげんにしろ!!」

「ぶべっ!!」

 新八くんの見事な蹴りで、坂田さんが吹っ飛んでいった。

 濃いカルピスって……何?







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