なりゆきまかせ

□06
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 銀魂の世界に来てしばらく。
 
 真選組の仕事にも慣れ、ヘドロの森にもようやくお客さんが増えてきた。
 ……といっても、私がバイトで入る日だけみたいだけど。

 貯金も少しずつだけど貯まってきているから、万事屋を出て一人暮らしの日も近いかもなぁ……。

 そろそろ賃貸の情報誌でも買ってみようかと考えながら歩いていると、道端に近藤さんが落ちていた。

 道の少し先には妙ちゃんの後ろ姿。
 たぶん、というか絶対、妙ちゃんにフルボッコにされたんだろう……。

 見つけてしまった以上、見て見ぬふりも出来ない。

「近藤さん、大丈夫ですかー?」

 膝をついて近藤さんの肩を揺する。

「う、うう……お妙すわん……」

「ほらほら、しっかりして下さい。
 こんなとこに寝てたら通行人のみなさんの邪魔になりますよ」

 呼びかけても目を覚ます気配がない。
 仕方なしに近藤さんの両足を持って、大きな体をズルズル引きずって歩いた。

 公園に着くと、大きな日陰のある芝生の上に近藤さんを転がした。

「あーっ、重かった!!」

 時間はもうすぐ夕方とはいえ、陽射しはまだ熱い。

 近藤さんをちゃんと寝かせてから、自販機で冷たいスポーツドリンクを買って一気に半分飲み干した。
 ついでにハンカチを水で濡らして戻ると、それで近藤さんの顔を拭いてあげた。

「あ、そうだ」

 近藤さんの頭の横に座り、頭を太ももの上に乗せた。
 これで少しは楽になるかな?

 公園に来る途中で屯所には連絡しておいたから、じきに山崎さんあたりが迎えに来るだろう。

 それにしても。

 近藤さんの顔をまじまじと見つめる。
 精悍な顔つきでアゴヒゲがちょっとオジサンぽいけど、笑うと可愛らしいし。
 総合的に見れば男前な方だと思うんだけど、なんでモテないのかなぁ。

 ……ストーカーだからか?

 でも、近藤さんと結婚したら、ものすごく大事にしてくれそう。
 幸せにしてくれそうな気がする。

 ……ストーカーだけど。

 ものすごーく前向きに解釈すれば、一途ってことだよね。
 それくらい全力で人を好きになれるっていいなぁ……。

 近藤さんの頬にそっと触れる。
 そのまま指を滑らせてアゴヒゲを撫でる。
 あ、けっこうチクチクするんだなぁ。

「う……んん……?」

 近藤さんのうめき声に、慌てて手を引っ込める。

 眉間にシワを寄せながら、近藤さんがゆっくりと目を開けた。


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