なりゆきまかせ

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「坂田サーン、回覧板デスヨー」

 バシィィン!! と玄関の板の間に回覧板を叩きつけて、キャサリンはさっさと下に帰っていった。

「もおー、そんな乱暴にしなくたっていいのに……」

 ブツブツ言いながら回覧板の中身をチェックしつつ、居間に戻ると。

「どしたー、茜ちゃん」

 ソファに寝転がってジャンプを読んでいる坂田さんが、全く興味なさそうに聞いてきた。
(ちなみに、新八くんと神楽ちゃんは定春の散歩)

「回覧板です。
 坂田さん、暇ならヘドロさんちに持って」

「あーっ!!
 俺いまからちょおっと用事があってね!?」

 慌てて飛び起きてアタフタする坂田さんをジトッと見つめる。

「……私が行くからいいです。チッ、役立たず」

「えェェェ!?
 だってアレじゃん!! 死地に赴くようなものじゃん!! 銀さんに死ねってこと!? 銀さん死んじゃってもいいの!?」

「天パは簡単に死にません。んじゃ、行ってきまーす」

「ちょ……茜ちゃんん!!」

 なんかウダウダ言ってる坂田さんを無視して、万事屋の裏隣のヘドロさんのところへ行った。

 死地に赴くとか、そんな大袈裟な。

 確かにヘドロさんは見た目は怖いけど、心は綺麗で優しい人(天人)なのに。

 ヘドロの森の店先で、今日も鼻歌を歌いながらお花の世話に勤しむヘドロさんがいた。

「こんにちは、ヘドロさん」

「こんにちは、茜さん」

 優しそう(怖そう?)に笑うヘドロさんに回覧板を差し出す。

「回覧板持ってきました。ヘドロさん、今日も精が出ますね」

「そんな……。僕は花が好きなので、花のお世話は自然なことですよ」

「本当にお花が好きなんですね」

 ……顔は怖いけど、という言葉は飲み込む。

 その時、店の入り口横に貼られている張り紙が目に入った。

『アルバイト募集中!!』

「アルバイト……募集してるんですか?」

「ええ。
 ボクがこんなだから、お客さんが怖がっていらっしゃらないでしょう? だから、表で接客をしてくれる方を探してるんです」

「ああ、そうなんですか……」

 確かに、店の前の通りは閑散としている。正直、この通りの店は商売にならないと思う。

 ヘドロさんもそれを感じているから、自分の代わりに店に出てくれる人を探しているんだろう。

 ……とは言っても。

「ちなみに、申し込みはあったんですか?」

「いえ、まだ一人も……」

 しゅん、という音が聞こえそうなくらい落ち込むヘドロさん(顔怖いけど)。

 こんな大きな体でしゅん、とか萌える!



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