短編(七竜2020-U)

□死にたがりデイズ
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――僕は一体、何のために生まれたのだろう。
漠然とした焦燥感に駆られる。


ここはなんという名前の場所だっただろうか。
ムラクモ組織とその住民らが一番最初に逃げ込んだ拠点だった気がする。

気が付いたらここに居た。理由は分からない。


武器が収納された棚を乱暴に開け、手当たり次第に漁る。

もう何でもいい。
とにかく使えるものが欲しい。

指先が硬いものに触れた。――小型ナイフだ。
長い間収納されていたのか錆びついてはいるが、そんなこと気にしている暇はない。

トーヤはそのナイフを両手でしっかり握り、そして躊躇なく腹部へ突き刺した。


「くっ……!」


ナイフを抜くと辺りに面白いほど鮮血が飛び散った。ロザリーが繕ってくれた学生服は血を吸いどす黒く染まっていく。
次に太もも、そして腕へとナイフを刺す。皮膚が破けることも、肉が抉れることも、一切気にならなかった。とにかく必死になって抉る。

脳の奥の方から、いつもの声が聞こえてきた。
自分を責めたてるような威圧感のある声。


――僕は、死ななければならない。


焦燥感が義務感へ変わる。
トーヤは勢いよくナイフを突き刺した。



ふしゃあ、と血が噴き出た。
動脈を切ったらしい。

止まらない。

生暖かい液体に塗れた床の上に大の字になって寝転がる。
この赤い液体は、先程までトーヤの体の中を巡っていたものだ。


しかし、生きている。
まだ、生きている。

段々と血の噴き出る量が収まっていく感覚がわかる。



――また、駄目だった。
トーヤは、諦めたように目蓋を閉じた。






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死にたい≠死にたがり

この後、ミカとリリィに発見されてしこたま怒られました。
 

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