短編(七竜2020/1周目)
□寂しさ解決法
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寂しさ解決法
ベッドに入り、もう30分は経っただろう。
普段ならば眠りに入っている時間。しかし、セージはなかなか寝付けないでいた。
体は十二分に疲れ切っている感覚はあるのだが、何度寝返りを打っても、睡魔は一向に訪れない。
(水でも飲むか……)
セージは仕方なく体を起こし、ベッド脇に置いてある靴を履いた。
薄暗がりの中。灯りになるものといえば、ナビと連絡を取る時に使うパソコンのみ。
そのぼんやりとした灯りを背に、セージは、水道水を汲んだコップを煽る。
ここ、東京都庁に来てムラクモ13班として行動するようになって、もうすぐ3ヶ月になるだろうか。
つい最近まで、毎日学校に通って勉強をしていたとは思えない変わり様だ。
使用済みのコップを適当に洗い、簡易シンク横の布巾の上に置く。
「……セージ」
聞きなれた声がして、セージは振り返る。
そこには、ロザリーの姿があった。
寝室とリビングとを仕切っている薄い壁から、ひょっこりと顔を覗かせている。
「ロザリー?……眠れないのか?」
ロザリーは困惑気味に視線を左右に動かすと、ウサギのぬいぐるみに顔を埋めた。
「……クーちゃんがさっきから、うるさくて。目が覚めちゃってね」
何か怖い夢でも見てるんじゃないかな。うなされてるみたいだし。
そう、ロザリーは矢継ぎ早に付け足す。
確かにクーは、寝相があまり良くない。 また、寝言を言うことも多かった。
セージは過去に記憶しているクーの寝相の悪さを思い出し、苦笑した。
「それは、災難だったな」
「……まぁね」
ロザリーは小さく息をついた。