前の五月の隠し表示にしっかりつながっております。なのでナリ様が岡豊城にいて、猫主と一緒に柏餅もぐもぐした後の時間軸。そして一日過ぎました。ごめん。




 いらかーのなーみーと くものーなーみ♪

 その「甍(いらか)」の文字を初めて見たのは確か国語の授業の有名作家の作品紹介かなんかだったと思うけど、見間違えたか無理やり似てる文字脳内で当てはめたんだか甕(かめ・この文字はなんかゲームで見たことあった)だと思ってぼーさんが中国まで入れたものを食べ物に変える魔法の甕を取りに行く話と思い込んだのはナイショでござる。なんでそんな勘違いをしたんだろ、あれか、毎回腹減り死亡でゲームオーバーになったからか。考えてみたらこっちだと風来って言ったら前田慶次だけど、腹ペコ系はおじさんの方が似合ってるぞ。
 戦国時代の場合はそもそもいらか、瓦は防災品なんだそうです、お姉さまによると火の粉からの延焼を防ぐんだそうで。だからお城とかお寺とか神社とか、大事な建物に使うんだそうだって。でも正直お姉さま治めるここだったらスプリンクラーがにょっきり生えたり出てきたからくりが消火剤ぶっしゅぅぅぅっ!ってやっても驚かん自信があるぞ。

『でもやっぱり鯉のぼりないと寂しいねー』
『こい?』

 さっきとおんなじ感想で二度ネタになっちゃうけど、なんか違和感がねぇ。別に前に住んでたとこそんな田舎でもないから、近所は鯉のぼりあったわけでもないんだけど。
 俺の独り言に反応して、首をクリンと。一緒に屋根の上にのぼって日向ぼっこしてるのは、ナリ様が懐入れて連れてきた小梅ちゃんです。船乗猫(船の守り神的な、まぁ鼠が食い物荒らすとえらいことなんでネズミ捕りと天気予報とね)なんでどうせ土佐まで連れてきてるし、拾われたのがここだから実家帰省みたいなもんってんで毎回抱っこしてくるんである。あれか、お姉さま言う通り「実は小動物スキー」か。

 鯉ってわかる? 船の上にずっといるから淡水魚は見たことないかぁと言ったら『さかな!』って反応した。 まあここのお城の堀には魚放してあって鯉もいるから見れはするか。ちなみにでかい城だから観賞用錦鯉とか思うでしょ? 「籠城してもたまには動物性タンパク質ほしいですよね」だそうです。ガチ戦国武将だからしょーがないかもだけど、お姉さまたまにBASARAアニキより雅度たんないよ?

『さかな ごはん うまうまする?』

 にゃ、とちっちゃな口から鳴き声と一緒によだれも落ちてきそう。あぁ俺が下でにょこにょこ背泳ぎ鯉のマネしながら柏餅うまうましてた時はこの子ぐっすり寝てたからなぁ。普通の猫には柏餅はいろんな意味であかんだろうけど、なんかおやつないかねぇ、聞いてみよっか?



 起きだした子猫を連れだしてくれてた要君が戻ってきたらしく「ぐにゃにー?」と私を呼ばわってる。松寿が鯉のぼりならぬ鯉腹掛けをスタンバイしてるのに笑いつつ見ていた南蛮の書物をしまってここだよと応えを返した。
 前にいた部屋と違ったからだろう、少し迷ったのか駆け込んできたうちの子はそのままの勢いで私の膝に駆け上がった。続けて同じく小梅ちゃんによじ登られて目元を和ませた幼馴染に生あったかい視線になってるのは自覚してるけど置いておこう。どしたの? うん? 小梅ちゃんがおなかすいてるから何かおやつ? あれこの子寝る前にゆでてほぐした鶏肉あげたって聞いたけどな。体小さい分胃も小さくて入らないからもう消化しちゃったか。小姓さんたちごめんしょーも無い用事ですがお願いします。

「にゃっ!(さかなっ)」

 小梅ちゃんが鳴いた声で視線を流せば、松寿が膝の上の彼女に鯉腹巻を見せてるというか振って猫の気を引いてる。あぁまだ成猫じゃない分爪が鋭いから、ほら破けた。

「うにゃ、ぐにょにゃにゅにょ?(それ、鯉の絵だから食べられないよ?)」
「にゅ? うにゃにゅー(「え」? にげたー)」

 あぁ、おなか空いたから魚の絵に反応したのか、松寿無駄に上手に書くから。
 にゃごにゃご猫語で言い合うというか要君がなだめてるのだけはわかるんだけど、うっかり腹掛けでそれは着るものといったせいか、どうもそれを着たら魚になれると思ったらしく『泳いでさかな取ってくる!』になってる、らしい。言葉解ってない松寿だけ置いてけぼりで何かねだられてるのだけはわかるので困惑してる。えーとね通訳通訳、私が理解してるのは要君のだけなんですけどね? あ、おなか毛の向きと逆に撫でてた松寿の手が止まる。

「……何故ここまで食い意地が張っておるのだこやつ。これ小梅、そなたが魚になったとて返り討ちでひと呑みで胃の腑に入っておしまいよ」
「ぴっ」

 あ。

 飼われて長い動物特に小さいころからってのは、実は人の言葉はわかるから。

「ぴぎゃーっ!!」
「な、小梅っ!」

 脅されたら逃げちゃうわけでして。


 その後、後の予定を返上し小梅ちゃん大捜索になっちゃったわけですが、あとで松寿が「あやつあれから魚を見ると逃げるようになりおった」と報告がありました。要君と二人でため息ついちゃっても仕方ない、うん。



 微妙に子供の日っぽくない上に一日遅れですみません。

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