Variety is the spice of life.

□Variety is the spice of life.
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「――名前ちゃん!?大丈夫?」


タオルを持ってくると山崎が部屋を出て行くと、深い溜め息が聞こえた。


「薬が完全に抜けるまで時間が掛かるらしい」

「後遺症は?」


神経系の薬としか浪士から聞かされていないことを思い出し、不安げに土方さんを見る。


「強めの薬らしいが、後遺症はない。だがな、薬が抜けるのに最低二十四時間は掛かる。今襲われたらいくらおまえでもあっという間にやられちまう。しばらくはここで大人しくしてるんだな」


体中に走る熱のせいで嫌な汗をかくのを感じて、何度か浅く息を吐き出して乱れそうな呼吸を整える。


「…屯所から出るなってんなら分かるけど、なんで土方さんの部屋から出ちゃダメなの?」

「あのなー…おまえが攘夷浪士に狙われたって皆が知ったらどうなるか考えてみろよ…」


呆れたようにまたも溜め息を吐くのを見つめたまま、脳内で思い描いてみる。


――たぶん、どいつもこいつも頭に血が上って……。


「…仕事に支障をきたすからか…」


別に女だからってワケではなく、例えそれが末端の隊士であってもそうなる。
そういう所なのだ、此処は。


「大した怪我はねェが、コップ一つ満足に持てねェんだ。どうせ仕事も出来ねーだろ。テメェは今日から急な出張だ」

「……マジでか…」

「テメェ一人でなんとかしようだなどと考えたことを反省でもするんだな。時間はたっぷりあんだからよ」


なんなら反省文でも書いてろと吐き捨てられ、説教はウンザリだと布団に潜り込んだ。


「……あれ?名前ちゃん寝たんですか?濡れてるから布団替えてあげようと思ったのに…」

「そのうち乾くだろ…。山崎、もう下がっていいぞ」

「はあ…では、失礼します」


山崎の声と小さくなる足音を聞きながらしばらく瞼を閉じていたが、そういえばと右肩を庇いながらもう一度起き上がった。


「さっさと寝ろや」

「いやいや、散々寝ちゃったからね?すぐには寝れないから。てゆーか、トイレとかお風呂とかどうすんの?」


それなりに返り血を浴びた隊服は脱がされて寝間着を身につけてはいるものの…(誰が着替えさせてくれたかなんて考えたくもないから考えないけど)…さすがにシャワーくらいは浴びたい。


「我慢しろ」

「無理だよー。暴れて汗かいたし、汚れたし、血生臭い気がして気持ち悪いもん」

「綺麗に拭いてやったんだがな…」






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