Variety is the spice of life.

□Variety is the spice of life.
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「……ご、ご迷惑お掛けして…すみませんでした……」


とりあえず謝った方が良さそうだと、不機嫌を通り越してまるで鬼のような顔をした土方さんに頭を下げる。


「テメェ、狙われたのは今日が初めてじゃねーよなァ?」


その口調に眉間に皺が寄った。


日頃の彼は一応は女だからと気遣ってるのか――声を荒げたりはするが、「テメェ」などと呼んだりしない。


――相当お怒りなんですけどォ…!!
怖い。どうしよう。


視線で殺されそうだと、冷や汗が背中を伝う。


「…い…言ってませんでしたっけ…?確かこの間伝え…「聞いてねェ。誤魔化しは止せ。面倒くせェ」……てません。でもって初めてじゃありません。ここ数日ずっとあんな感じでした」


これ以上怒らせるのは得策ではないと判断し、素直に答えて静かにため息を吐いた。


「いつからテメェは医者じゃなくて隊士になったんだ?あ゛?」

「…医者だけど、隊士でもあるでしょーが…てゆーか、何なの!?なんでそんな怒ってんの!?」


完全にブチギレている土方さんを前に苛々しはじめ、真選組に入隊してからずっと仕事中は使っていた畏まった口調が昔の喋り方に戻ってしまう。


「隊士だっつーなら、報告を怠ったのはいただけねーよなァ?」


そう言って立ち上がった土方さんは、少し開いていた襖を静かに閉めた。


外は暗く、部屋の外もやけに静かだ。


一体何時なのだろうと、視線をさまよわせる。


「……一時…って…え?真夜中…?」


――マジか…。気を失ったとはいえ、寝過ぎじゃね?


「――オイ、山崎。水と粥持って来い」


時計を見つめたままボケッと考えていた耳に聞こえた山崎を呼ぶ声。


ハッと我に返って視線を戻すと、携帯を畳んで文机に置いていた。


間を置かずして、山崎が水などを持って部屋に入ってくる。


「気がついたんだね。良かった」


山崎の問いに軽く頷き、コップに注がれた水を口に含んだ。


「この部屋におまえがいる事は、俺と山崎以外知らねェ」

「…………はい?」


もう一口と唇に当てたグラスをそのままに、意味が分からないと目を丸くして聞き返す。


本当に?と確かめるように見ると、頷く山崎。


次いで副長を見た瞬間、いまだに熱い右肩がズクンと疼いて、握っていたコップが力の抜けた手から布団の上に落ちた。





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