Variety is the spice of life.

□Variety is the spice of life.
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「…終わり?確かに、アンタで最後だわ」


へらりと笑って右肩を押さえると、その男との間合いを詰めようと地を蹴った。


だが、男の一歩手前で視界が歪む。


「――ッ!?」


咄嗟に地面に片手を付いたため、辛うじて倒れるのだけは避けられたが、それを見ていた男はニヤリと嫌な笑みを浮かべると、右肩を思い切り蹴りつけてきた。


「――ぐっ!!」


撃たれた右肩に激痛が走り、噛み締めた唇から苦痛の声が漏れる。


「撃ち込んだソレには神経系の薬が仕込んである。お医者様ならば皆まで言わずとも分かるであろう?」


男の言葉を理解する前に視界が一瞬暗くなりかけた。
意識を失ったらお終いだと、舌を噛んで耐える。


――油断した…。


さすがに何度も舌を噛み切るワケにもいかず、抜き身のままの刀で太ももを傷つけながら霞む目で周りを見る。


倒れている大勢の刺客達は、ソレを撃ち込ませる為の囮だったのだろう。


そこまで考えたところで、グラグラする頭と、肩から全身に走り出した熱に耐えきれず、地面に両手を付いた。


――ヤバい、力が入れらない…。
…局長。総悟…。……副長…。


身体は痛みを感じなくなったのに、熱さだけはやけにはっきりと感じる。


真っ暗になる視界に抗えず、脳裏を過ぎる人々に、ごめん。と呟いた。





そのまま動かなくなった名前の肩に足を置いたまま、男は気持ち悪い笑みを深くした。


足をどかし、横たわる細い腕をひっぱり上げてまじまじとその姿を視線で舐めつける。


「噂に違わずいい女だな」


命令通り生け捕りにした。ならば多少のことは大目に見てもらえるのではないかと、男は乱れた黒いスカートから覗く太股を手の平で撫でた。


少しくらい。という考えはその滑らかな柔肌の感触に消え、ゴクリと喉を鳴らすとスカーフをスルリと抜き取った。
晒された名前の白い首筋をペロリと舐めつけて吸いつく。


港に船が着くまでにまだ時間はある。


携帯を開いて時間を確認して、そう考えながら服の中に手を伸ばそうとした。


瞬間、男の体はビクリと跳ね、硬直した。


背後に感じたすさまじい殺気に、振り返ることすら出来ない。


「何してやがる」


放たれる殺気とは対照的に、声は至って静かなのが余計に不気味さを際立たせた。






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