Variety is the spice of life.

□Variety is the spice of life.
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「わたしには用はないですー。お帰りくださーい」


言い終わらない内に刀を鞘から抜くと、腰を落として目を閉じる。
一度だけ深く息を吸い込んで吐き出してから、取り囲む連中を睨みつけた。


ガラリと変わったこちらの気配に浪士達の顔つきが変わり、下品なざわつきが消えて静寂が訪れたのは一瞬。


「――ぐあっ」


手柄と報酬は自分の物だと、真っ先に向かってきた男の鳩尾を刀で払って地面に叩きつける。


それと同時に、着地した右足で二人目の男の側頭部を激しく蹴り付けた。


男はそのまま地面に顔を殴打して気を失う。


「――この小娘が!」

「落ち着け!生け捕りしろとの命令だ!」


騒乱する中響くのは金属音や殴打音、バタバタと乱れた足音。


その中を持ち前の勘の良さで向かう刃を避け、襲ってくる刺客達の腕や足を斬りつけていく。


――こっちは幼少からドSに稽古つけられて育ったんだっつーの。
あんたらみたいな雑魚相手にやられるかってんだ!


気を抜けば容赦なく命を穫ろうとする幼なじみに比べれば、確かに相手は弱すぎた。
真選組一の剣の遣い手に育てられたのだ。雑魚が何人いようとも関係ない。


だが、なぎ倒されていく男達の中に、拳銃の様なモノで狙いを定める者がいた。


それに気がついてはいたが、日に日に増え続けた浪士の数はざっと二十を超え、いくら実力に差があるといえども飛び掛ってくる彼らを倒すのに精一杯で、ソイツに近づく事が出来ない。


急所を外して斬りつけるか気絶させる戦い方のせいで、数がなかなか減らないのだ。


体力ばかりが奪われるが、それは相手も同じ。
生け捕りは絶対らしく、殺せないのはお互い様だった。


急所を撃たれない限りは大丈夫だという考えは甘かったらしい。


その方向から小さな発砲音が聞こえて、弾が右肩を貫いた。


「――っ…」


急所を外しても痛いものは痛い。


血が吹き出る右肩を押さえ、撃った男を睨んだ。


「あれだけの人数を戦闘不能にするとは大したものだな、小娘。だが終わりだ」


男は拳銃に似た武器を懐にしまいながら、様子を伺う様に距離を縮めてきた。






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