It withers and withers

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「なぁ、おい…。」

「あぁ…あいつがスペルビ・スクアーロだ。」

「あいつがボスを…。まだ子供じゃないか。あんなガキに好きなようにされちまったら、最強部隊ヴァリアーの名折れだぜ。」

「それがよ、新しいボスの座に…あの9代目の御子息が着くらしいぜ?」

「何だって!?」

「ったく、テュール様を慕っていた部下はどんどん辞めていくしよ…ラサ様の事だって…。あぁ、この先どうなっちまうんだろうなぁ…。」






廊下を歩いていると、隊員のヒソヒソと話す声が聞こえてきた。

あいつら雑魚と違って出来のいい俺は、五感も優れている。俺には聞こえていないと思ったんだろうが、聴覚だって剣士には重要だ。



たたっ斬ってやろうかと思ったが…大事な時期だというのに、雑魚共がどんどん辞めていった為、ヴァリアーは人手不足。

手なり足なり、使い道なら幾らでもある。来たるべき日が来るまで、カスだろうが何だろうが…生かしておいてやるぜぇ。






それに俺は今、機嫌がいい。






「ゔお゙ぉい、入るぜぇ!!」



ノックもなく入った執務室。
華美な椅子に座りデスクに足を投げやって、アイツは堂々とした態度でふんぞり返っていた。



「どうだぁ、ヴァリアーのボスの座はよぉ!お気に召したかぁ!?」

「…フン。」






そう。新しくヴァリアーのボスの座に着いたのは、9代目の息子、ザンザスだ。剣帝テュールを倒しヴァリアーに入ったのも、コイツの野望を叶える為。

俺はこいつの強さと怒りに憧れ、ついていくと決めた。



「相変わらず態度のでけぇ男だぜぇ。で、何の様だぁ?」



ザンザスがクイッと顎で指した方を見ると…使用人のメイドの横で、幼いガキが応接用のソファに小さく座っていた。



「何だぁ?てめぇ。」

「ラスティ・ア・テュールです!ラサって呼んでください!」



ガキはペコリと御辞儀をし、屈託のない笑顔を俺に向けてくる。ラスティ・ア・…テュール…まさかコイツは…。






「前ヴァリアーボス、テュールの一人娘だ。」



ザンザスは気だるそうに話を続けた。



「9代目のジジイから、テュールの娘を変わらず屋敷で育てろとの、お達しだ。」

「あ゙ぁ!?施設か何かに預けるんじゃなかったのかぁ!?」

「知るかよ、上からの命令だ。コイツの世話は、今まで通り専属の使用人がする。…だが下らない事で俺の手を煩わせてみろ、すぐに屋敷から追い出してやる。」



鋭く睨み付けるザンザスに臆する事なく、ガキは口を開いた。



「だって、私のお家はここだもの!パパだって今は居ないけど、いつ帰って来るか分からないし…。」



ガキは目を少し潤ませた。

コイツには、俺に斬られ父親が死んだ事を、知らされていないのか。何処か遠く長期の仕事に行ったと、周りに聞かされたようだ。






「おい、ラスティといったなぁ…。」

「ラサでいいよ。」

「…ラサ、此処はガキが居ていい所じゃねぇ。何処か別の所で暮らした方が、お前の為だぜぇ?」



ガキは一瞬シュンとして俯いた後、顔を上げて俺を見た。



「イヤよ!さっきも言ったじゃない、私のお家はここなの!出てったら、リザやラダンに会えなくなるじゃない!」

「…リザ?ラダン?」

「生まれた時からずっと、私のお世話をしてくれてるの!会えなくなるなんて、イヤ!」

「ハッ!勝手にしろぉ。どうなっても知らねえぜぇ。」




まぁ別にコイツがどうなろうと、俺の知ったこっちゃねぇ。今はそれどころじゃねぇんだ。ガキの相手なんかしてられるか。






「もういい、てめぇらは下がってろ。スクアーロは残れ、話がある。」

「…かしこまりました。さぁ、ラサ様。」



ガキと使用人は部屋を出るよう命じられ、席を立つ。ドアの近くに居た俺に、ガキはすれ違い様に舌を出して睨んできた。



「べーっだ!!」

「このクソガキィ!!」






ザンザスがヴァリアーのボスになって1日目。この日が俺とアイツとの、初めて会った日だったんだ。









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