my little ”alo”!
□17 "すべて"
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「ゔう…いだい、痛いよぉ…!」
「今薬持って来てやるから、我慢しろぉ。」
チェストの引き出しに入っている薬と水を持って、アーロの元へ戻る。
嫌だ嫌だと首を振るアーロの口を無理矢理開けて、ゴクリと一気に流し込ませた。
「げほっげほ…っ!アーロ、もう嫌だ…!」
「…あとちょっとだ、頑張れぇ。」
ここ数週間で、アーロの体に目まぐるしい異変が起き始めた。
激しい頭痛と関節の痛み、度々起きる呼吸障害。
アーロの成長スピードが体についていけてない様で、日を追うごとにキツくなっているみたいだ。
痛い、嫌だ嫌だ
と泣くアーロの背中を擦り、少しでも楽になるよう眠気を促す。
薬に混じった睡眠作用が効いて来たのか、痛がりながらも徐々に呼吸を和らげウトウトと目を閉じ始めた。
「俺はここにいるから、何処にも行かねぇから…。安心して寝てろぉ。」
「ほんと…?」
「あ゙ぁ。」
「ふっ、ふぇ…ぐす…、」
痛みに耐えて汗が滲んだ小さな掌を、握る。
涙と鼻を啜りながら枕に顔を押し付けて、呼吸が戻り俺が安堵の溜め息を溢した時には、すーすーという寝息が聞こえてきた。
このままで、いいのだろうか。
この実験の目的はほぼ果たしている。
当初の計画通り、アーロは人間化し超絶なスピードで戦闘能力と知識をつけて任務に貢献し、生身の人間と比べ物にならないくらいの治癒能力で生産性・効率も格段に上がった。
その代償は、この始末。
大丈夫か?無理はさせるな。大事な被験体だ。
もっとランクを上げろ。敵の中に放り込め。大丈夫、簡単には死にやしない。
異変?逐一データを採る様に。
治療?なぜその必要がある。
打撲一つ、傷一つ。全てが実験だ。
死んでもなお、データになる。
惨い実験に荷担していたという意識からか、最初は研究者共も何処かオブラートに包んだ様な態度だった。
だが、端から見ている人間はすぐ慣れる。
期日が近付くにつれ、アーロが大きな成果を出すにつれ…。
そして、まだ1ヶ月という時間があるのに限界が垣間見えてきたアーロに対して。
胸クソ悪りぃこの全ての出来事の何もかも、たたっ斬っちまえればいいのになぁ―――。
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