long

□3
1ページ/6ページ


――土曜日。



この日、美和子は本屋で一人、店番をしていた。
住宅街の中にポツンと建っている古本屋である。
個人で営んでいて、古本屋にしてはなかなか趣のあるお洒落な店だ。

美和子の叔父がここの店主と友人であり、その関係で美和子を雇ったのだった。


美和子の仕事は基本、レジや棚整理、掃除などの雑務だ。
店主はというと、午後から趣味である釣りに行ってまだ戻って来ていなかった。

「(パパさん、おっそいなー)」

『パパさん』とは釣りに行っている店主のこと。
店内の壁掛け時計を見ると、ちょうど17時を指していた。
土曜は16時で上がらせてもらう美和子なのだが、パパさんが戻って来ない為、上がることが出来ないでいた。


棚整理をしようと思い、店内に出る。
ちらほらと立ち読み客がいた。
出しっ放しにされた本を、元あったところに蔵う。


すると背後から、すみません、
という声がした。


パッと後ろを振り向く。




「これ、お願いします。」




制服姿の長身の男が本を持って、立っていた。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ