贈り物
□東空麻衣の暗黙事項〜偶然という名の幸運〜
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東空麻衣の暗黙事項
〜偶然という名の幸運〜
眠れない午前3時。
真っ暗な空をゆっくり雲が横切っていく。
麻衣は、ぼんやりと空を眺めていた。
眠れないのも、当たり前かもしれない。
夜の仕事が多く、いつもは太陽が出ているときに眠っているから。
いつのまにか、ひざの上に黒猫…パートナーである風麻…が乗っていた。
「なんだ、風麻は寝ててよかったんだが」
「オレも眠れなかったし」
そう言った後、無防備なあくびを1つ。矛盾している。
悪魔界の黒猫に限らず、魔女のパートナーは話せるモノが多い。
風麻は人の姿になることもできるけど。
「なんか、懐かしいな」
「なにが?」
「こうやって、2人で空を眺めたの。」
「…そーだな」
「昔みたいな口調で話してくれよ。
兄と妹だろ?」
「……昔は、でしょ。
私の隣からいなくなったのは、どこのどちら様?」
「あー……悪ぃ、死ぬなんて思ってもなくてさ」
麻衣は、昔のこと――自分が、魔女になる前のことを思い出していた。