Alice? -long-
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特にそれから変わりはなかった。
「女王陛下。今のアリスは何番目ですか」
「今のアリス…
87番目のアリスが昨日死んでしまったようだね」
私の感情を表に出した、あの日。
変わらず彼と共にいるか、
トランプと話すか、
お茶会をするか。
彼女のいない日々は何も変わりなく。
``
「…どうしてすぐに私に教えてくれないのかしら?」
「君の存在は在って無いようなものだろう?
…下手に人前に出られては困る」
変わりはない、が。
あの日からというもの
彼の目が厳しくなった気がする。
「おいで」
ガランとした広間。
響く彼の低音な声。
伸ばされる手。組まれた足。
いつもの光景。
トランプたちのように床に座らせて欲しい。
と、言えば命令と言われ
喪服で良いと言っても命令と言われ
これが物語の進まないお話。
膝に座らされ、髪を梳かれる。
されるがまま。それがいつものこと。
```
「…起こっている事を先に言えば、機嫌が直るのかね」
考え事をしている私が怒っているように見えたらしい。
項にキスをされ、耳元に彼の唇。
囁くように、ひそやかに。
「今日は公爵夫人とチェスをしようと思っていてね。
もちろん、国王陛下も来てくれるだろう?」
````
くすぐったくて身をよじれば
楽しそうに笑われる。
…顔を赤らめたりなんかはしてあげないけど。
「アリスのいない物語は退屈ですので、喜んで」
本当は断る権利なんて無いけど。
この人の望んでいる通りに答えるのは癪。
挑発気味に彼に目を合わせれば
後ろにトランプたちが控えているにも
かかわらず長いマントの中に手を回し、
足を撫でなれる。
体が震える私の項に、もう一度キスをした。
食器を運ぶ音と、
ダージリンの香りが、
鼻を掠めた。
ーーしばらくして、私達は別室に移動する。
…