Alice? -long-

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外出禁止令から数日が経った
予想通りの暇を持て余した昼時である。


変わらない天井、煌びやかなシャンデリア、内壁
絨毯、庭の草花、並べられた服や靴、ふわりと香る甘い匂い
青い空、磨かれた食器、花瓶、柔らかなベッド
カーテンの色、日の光に輝くステンドガラス、鳥の声

全てが変わらず存在し続けている。
先日、2枚トランプの代わりがやってきたが
二人とも笑顔で握手をした。
特に妬みなど嫉妬じみた感情は無いらしかった。
挨拶の言葉だけでの判断だが怯えているような気さえした。



(…どうしてかしら)



私の能力で分かるのは
その人間の言っていることが本心か本心でないか
どちらかの答えしかない。

考えていることまで分かれば楽だったのに



(でも、それではゲームがつまらない…か)



一人、庭から門前までの散歩道。
しかし
道のゴールには見知った帽子頭と
初めて見る淡い長くふわふわとした桃色の髪の少女が
何やら争うように話していた。


「いいから行って来い。待っててやる」
「もし私に何かあったら守ってくれるんでしょう?」
「ちょっと行って名乗るだけで…「帽子屋さん」
 これは、国王陛下こんな所までお出迎えですか」


声をかけたところで
彼は気づいていたように落ち着いていたが
少女には驚かれ警戒されているようだ。


「ぼっ、帽子屋さん?誰なの、この…綺麗めな女の人
 まさか恋人とかー…」

「変なことを口走るな。首を刎ねられちまう」

「もしかして、この子は」





“ALICE”なのか。





声に出していない筈の言葉でも空白の時間のみで
理解したように帽子屋は頷いた。
未だに警戒している彼女は男の背に隠れたままだが
彼女が“主役”。この物語の“主人公”。


「…一緒がいいなら帽子屋さんもいらっしゃいな。
 私が案内するわ。宜しくね」


最後の言葉は彼女に向けて笑顔を見せた。
マントを翻し後ろに2名がいるのを確認しながら進む。
拗ねた子供のように頬を膨らませ顔を赤くしてる“アリス”は
私が気に入らないのか気になるのか、
私でなく彼に度々質問していた。


「女性なのに国王なの?」
「あーゆー美人は帽子屋さの好みじゃないのね」
「女王陛下も女性なのかしら」
「私もあと少し胸が大きかったら…」


おしゃべり…ほとんど一人で喋っている。
案内といっても玉座まではそう遠くないので
国王が視線を送れば弾いたように口を閉じた。

頭が悪いわけではないようで安心した


「扉を開けてくれるかしら」


トランプによって開かれた扉の先には
優しげな顔をして玉座に佇む彼がいた。


「一体どこまで散歩をしていたのかね」

「玄関までですわ。お客様がいらしていたので」


紹介をするため横にずれて彼女を前に出す。
バランスを崩したようだったが、
彼の前なのだから礼儀正しくすべきなのだ。


「国王はここへ来たまえ、帽子屋は外へ。
 アリスは…私の前へ」


トランプ達に連れられ帽子屋のいなくなった広間には
国王、女王、ジャック、数人のトランプ、アリスが残った。
アリスのぴりり、とした緊張感が伝わってくる。


「(ボソッ)陛下の前では跪いて。
 ジャックは陛下に無礼だと判断したら斬るわ」


女王陛下の元へと通り過ぎる瞬間に
小さく呟いた言葉はしっかりと彼女に届いていたようで
静かに床に膝を下ろした。

一方、国王陛下が男の元へ着いた時には
周りに控えていたトランプ達は退き
伸ばされた手にされるがまま横抱きで膝に乗せられた。

流石に、その動作には驚いたようで目を丸くするアリス
久しぶりだわ。こんな視線を浴びるの。


「…女王様」

「ああ、分かっているよ。
 構ってあげるから少し待っていておくれ」











そういう意味で言ったんじゃないって






「それではアリス。まずは名前を教えてもらおうか」





貴方は分かっているくせに。







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