Alice? -long-

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ああ、また怒られるのよね。私…

なんだか不思議の国へ来てから彼に怒られてばかり

それだけ私も悪いことしてるのだけど。




「…彼の機嫌の具合はいかが?」

“2枚、トランプが”


護衛に来ていた子達か
もう少しに人数がいたけれど無事ならば良い。


「お参りしなくちゃね…悪いことをしたわ」

「…そう思うなら」


彼には珍しい咎めるような声だった。


「ごめんなさい…でも、私には目的があるから」


目的を忘れたらいけない。
不思議の国は時を刻まないから
…忘れないようにしなければ何時か目的を忘れて…


「そうですか」


馬車は思いの外早く城に着く、
彼は口を開けずにフリップで足場に気を付けるよう言われた。
そして門の前に知った顔が見える。

まさか表立って出向くとは思わなかったので
柄にもなく呆けてしまっていた彼女だが、
自分の元へ歩み寄る男に意識が戻る。



伸ばされた腕、



トランプ達が少し身構えて私達を見守る。

国王陛下の首を絞めるのか、

本来なら勝手な行動をとった私を疎む。

しかし

彼女達が私に向ける目は不安が含まれていて

本当に優しい人ばかりだと思った。





女王陛下は


私の




体を





地から足が浮くほど








強く抱き込んだ。






温かな体温が伝わる…
ジャックもトランプ達も目を丸くしたのが分かった。

その間にも

彼が目を細くして怒気の孕んだ声で言う。


「どうして、トランプを撒いたのかね」

「…彼に話があるって言ったでしょ?」

「まったく、私を翻弄して楽しいかい?」

「悪気、少しはあるけれど楽しんではいないわ」


頭上での溜め息。

今回は怒られていないけど溜め息が
かなり回数を積んでいる気がするのは私だけ?


「気が済んだのなら暫くは外出禁止だよ」

「…酷いわ。暇になってしまうじゃない」


いい加減に離して欲しい。

別に正式な場でも無いのだから
こんなに近付く必要性は無い筈なのに


「ならば、君が飽きないように構ってあげよう」


と言っても、
どうせ女が好きな彼が無理矢理にでも
触れてくるのは目に見えている結果であり


「命令だ、国王陛下…
 私が許可するまで何時足りとも私から離れるな」



目的の為なら狡い手段でも使う考え
``    ````


「…分かりました。女王陛下」




そうやって翻弄してるのは


貴方でしょうに。




「早く目的を忘れて私に溺れてはくれないのかね」

「………ふふ、お断り致しますわ。」



女王の怒気の消えた口調に安心したジャックが
フリップで城内へ入ることを促すと
国王を腕に抱きながら見事な蹴りを繰り出した。



「公務は全て終えた。邪魔をするなジャック」



女王陛下は

そのまま抱き上げた彼女の額に
髪の上からキスを落とし、

出来る限り距離を取ろうとして肩に置かれた手を
自らの首へ回して、歩き出す。


「愛しているよ、国王陛下」


慣れか、元から身に付けている技術か、
無駄の無さすぎる彼の動作。


暫くは派手なスキンシップへの抵抗は無駄


女王陛下と出会ってから幾度となく繰り返される諦め。


素直な気持ちは嬉しい…でも私には目的があって
いつかは不思議の国から消えるから答えたらいけない。

…素直な気持ちを裏切りたくない。



不快にする事は避けたいから身を預ける
ただ甘すぎる言葉は毒のようで心を蝕んでいく


困ったものだ、と彼の肩に顔を埋めた。




心だけは彼を遠ざける








子供が掬った砂の山
指の間から零れてく

まるで記憶みたいね

顔を上げたその場所
黒い髪の長い少女が
ニコリと笑いながら
座って子供を見てた

落ちていた筈だった
時計の枠が描かれた
あの真っ黒な画用紙
消えて無くなってた

ああ、彼女はもしや

子供は手に残ってた
少ない彼女の記憶を
少女の刻んだ時間を
差し出し泣きました


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