kurobasu -long-


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“後悔したって遅い”
私が君に捕まった時に言われた事を今痛感したよ





どうやって帰路についたかも分からない。
先輩達には心配され、後輩には迷惑をかけた
…はず、なのに記憶が曖昧である。

否定された。
手を払われた。

あんなに私を求めてくれた目は今、どんな。




ピピピピピピ



夜11時、眠れない眠れるわけない。
もし本当に________________




「林檎さん?こんな時間に」
『健太郎くんっ…どうしよ、花宮くんに嫌われちゃう』


「え」
『どうしよ…どうしよう私』
『花宮くんが本当に好きなのに…!』
『嫌われたら私、生きていけない…』

「ま、待って。一旦落ち着いてくれる」



こんなに感情的になる彼女を見るのは初めてだ。
どんな時でも直ぐに先を見越して状況を読み、
器用に生きているように見えていた。
椅子の上、もう船を漕ぎだした自分にかけられた電話は
今チームメイトの中で話題の中心にいる人物から。
どうして不器用なのか、いや、加減を知らないのか。



「…落ち着いた?」  『…ん』

彼女の乱れていた呼吸が安定した頃
まずは本題を切り出す。

「面白がって変に暈した自分も悪いの分かってる?」



元々の発端は彼女である。
確かに隠し通すのは不可能だし
たまには弄りたいという気持ちも分かるが
この女は大事な事を見落としているのだ。



『分かってるよ?だけど
 ずっと、私だけが花宮くんを好きだなんて嫌…』
『我が儘かも知れないけど』

『来年生徒会に入れなかったら
 私と付き合うメリットなんか無いじゃない…?』



『少しの間で良いから彼に愛されたいの』





昔から、周りの事ばかりに目を向け
空気を読むことだけは得意になっているくせに
自分に向けられる視線には気付かない。





まったく器用さを感じさせない。
なんて余裕の無い苦しい声なんだろうか













ピリリリリリ

「ちっ…何」
「花宮、林檎さんが嫌い?」


夜の10時過ぎでも電話に出るなんて
まだまだ寝る気では無かったのか…寝れないのか。
机の上で開かれた教科書を一瞥し、
自分も仲間が心配で寝れないだけ似たようなものか
と思った。



「はぁ?…それがテメェに関係あんのか」


「なんで、直ぐ別れないわけ?」
「こんな面倒な状態で放置なんて花宮らしくない」
「要らないなら捨てるって言ってたじゃん」


「…うるせぇ」



ブツッ
切られた電話。怒りに満ちた声。
それは男の言葉を聞かずに喋り続けた性なのか
それとも
話の内容に問題があったのか

そろそろ下手なプライドを捨てた方が良い。
頭が良いんだ、自分の気持ちなんかとっくに気付いてるんだろうに。






「何だって、こんな役回りするんだろ」



アイツの本気なんて滅多に無い。
喉の奥から絞り出すような苦しい声だった









明日は日曜日。    部活は 無い。






『…メール、しよう』
“今ならきっと会って話せるんじゃない”

「…メールか」
“何時までもやり直せると思わない方が良いよ”






『明日家に行っても良い?』

「何時でもいいよ」





後悔はしたくない
 貴方に伝えたい事があるの
お前に伝えたい事があるんだ



(あー…花宮暴走したりしないと良いけど)




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