kurobasu -long-


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自分が何に苛つくのかも定かでない。
ただ無償に壊したくてたまらない。


チームメイトを潰すほど馬鹿じゃない
なら相手は決まっているだろう?









ぱちん









苦痛に歪む顔
まるで悪魔をみるかのような目
中には涙を流すやつもいる。

ジワジワと広がる巣で足掻いたってどうにもならないのに
馬鹿な奴らだよなぁ…
大人しくしときゃ壊れずに済んだ。



『私が好きなのは花宮くんだけだよ』
『もうすぐ2年生になるんだね』
『健太郎くんは只の知り合いだからね』



わざとじゃないか、疑いたくなる文だ。

コイツのことだからわざとである可能性も高い

始めからそうだ。
最初は警戒心丸出し、怯えてもいたくせに
いつの間にか分かったような顔して隣にいた。


お前は何を分かっている?
無理矢理犯しても傷をつけても幸せそうに笑いやがって。

俺の目の届かない場所で誰に会っている?
学年も違う健太郎と、オトモダチだなんて嘘吐きやがって。



何故、健太郎との関係を言わない?
故意に隠してるのか無意識なのかハッキリしたらどうだ。




「休憩入れ。15分経ったら自主練」

「花宮どこに行くんだ。休憩はちゃんと…」

「うるさいな。戻ってくるから黙ってろ」




「昨日の今日で仲直りもしないか」
「難しいっしょ、あんな状態じゃあ」
「さっさと認めちまえば良いのにな」


チームメイトの会話等知らず
外の水飲み場まで出てくれば夕暮れに染まる。
冷たい水を頭から被って思考を巡らせた。

あれから2週間林檎と話していない。

いくら暑くても春に近づく手前。
頭から水を被っていれば寒くもなる
ふと、気付けば手が震えていた。

何を動揺している?
“花宮くんが居なかったら生きていけない”
それはアイツだけの馬鹿馬鹿しい戯れ言。
林檎が居なくなったところで困ることなんて無い。
何も無かった。そうだろう?










『…花宮くん?』

そうだったじゃないか。


「…チッ」


最悪だ。
噂をすればなんとやらは思うだけでも
有効なのか?初耳だ。

ユニフォーム姿のこの女も部活なのだろう。
俺と違いがあるとすればジャージを着込んでいるくらい。


『な、何でずぶ濡れなの…!』


風邪を引いてしまうと騒ぎながら駆け寄る林檎
変わらない声色。変わらない態度。




中学時代、また俺や前の男より前
健太郎の女だったなら?


健太郎と付き合っていた時も言ったのか?
他のグズで馬鹿な男達にも?







“花宮くん、愛してる”







ジャージを肩に掛けようとする
手を思い切り払った。




「気に入らねぇ」




あのときと同じ台詞。
イライラして胸が熱くなる
警報のような信号が頭を痛くする


一体何だって言うんだ。
なんで頭がグチャグチャになる。




沸き起こる虚無感に押し潰されそうだ





(始めての拒絶に頭が真っ白になる)
(首の噛み痕がピリピリ痛む)

(あのときに痛んだ首の噛み痕は)
(私の心を表していたようです)


(私を嫌いになってしまったんですか)




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