Alice?1


□君の
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「お茶会の準備を」


「はい、女王陛下」

「…」


「…お手伝い願えるかしら」

「(コクリ)」









私は
ハートの女王様のお城に仕えるトランプ


彼は
お城で唯一の男のトランプ兵





絶対に、結ばれない関係。





カチャ、カチャ




「…」



帽子屋さんとお茶会をする女王様

私とジャックのことなんて見向きもしない。
ただ
隣同士、2人で並んでいるだけ。



「ジャック、
 今日のお茶請けはカップケーキよ。
 少し食べます?」


皿に余ったケーキを分けておいた。
彼はフリップのようなものに書き込む。



「“食べてもいいなら食べる”」

「どうぞ」


一度として声を聞いたことが無い。
気になったから
前に、女王陛下に尋ねたことがある。








「なぜ、ジャックは喋らないのですか」

「10年間で10文字以上の言葉を
 発することを禁じてるからだ」

「…ということは、1年に1文字…」

「そうなるな」


さらりと、淡々と無表情で言い放つ。
理由をよく覚えていた。
あまりにも、この人らしい、

分かりやすくて酷いルール。







「“ケーキ、うまい”」

「それは良かった」



あ、笑ってる。
格好良い。もったいない。
すごく気さくで、優しい人だと思う


「“優しいな”」


それはあなたよ。

私は
ハートの女王様のお城に仕えるトランプ
その中の一人にすぎない。

私は女王陛下のために存在するのだ。



「そんな事ないわ」

「“優しい。性格も声も”」


私達の主が目の前にいるのだ。


「私を口説いても意味はありませんよ」


私達は女王陛下のために存在する。
ルールは絶対。命令も絶対。
同じ道を何度も、何度も。
繰り返し。



「“確かに、な”」




私は彼の声を聞いたことが無い。
分かってる。







これは

   報われない恋なのだ。







「アリス、お願い。」



一人佇むベランダで願う。
何人も消えていく少女達に。



「もう少し、もう少しだけ…」




“今日はいい天気だ”
“また蹴られた。
 何も言って無いのに”


“優しい声をしてる”



いつか、この想いを届けて。




「ジャックの声が聞きたいんです」




彼の言葉をはじめて聞いたときは

そのときは、






「“おはよう”」

「おはようございます。ジャック」




そのときは。



「…好き。ジャック」




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