映像遊技

□BL 4/1嫌い
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「野々宮、俺何かしたのかな」
俺は野々宮に聞かずにはいられなかった。
季節は春、入学式を明日に待ちかまえる人もいるだろう、そんな季節。




朝早くにメールが届いた。
その音で目を開けて携帯を見た。

携帯のディスプレイに流れる"浅葱さん"の文字。
珍しいこともあるんだなと思いながら俺はメールを開いた。

件名:
本文:嫌いだから。お前のこと
そういうことだから

以上

いつもの俺ならすぐに返事を出すんだけど。
浅葱さんからしかも朝にメールが来たのに!

"嫌い"
その二文字が頭の中を回る。
そういうことだからと言われても……。
いや、メールだから言ってないか。

こんなメールにはどう返せばいいかわからないので、俺は携帯を閉じた。
「とりあえず大学に行かなきゃ!」
もしかして浅葱さん機嫌が悪くてイライラしてるだけかもしれないし。

野々宮に今朝の出来事を話すと、
「ふーん。お前何かしたんじゃない?」
やっぱりそうなのか・・・って!
「そんなに俺って失礼なことするような人に見える!?」
「いや・・・、心配させたんじゃないかと思ったんだけど」
と野々宮は手をだらりと曲げて。
手を下に垂れるように下げて、コレ関係でさ、と手をゆらゆらさせた。
そんなに俺って信用ない?と言おうとしたその時。

プルルルルルルルル
今はお昼。
知り合いは大学でサークル活動の真っ最。友人の野々宮は今自分と会話中。
となると残りは…………
「さ、さとみちゃん?」
でもさとみちゃんはもう俺に構う理由が無い。

まあ携帯を開けば相手がわかるんだけど、認めたくなくて。
「浅葱さんからだろ」
出ろよと促され、俺は、

「野々宮、俺何かしたのかな」
と苦笑いしながら通話キーを押した。



「もしもし?浅葱さん?」
『僕に決まってるでしょ、携帯見なかったの?』
見たよ、見ましたけど。
浅葱さんがこの時間帯にかけてくることは初めてですから!
「見てませんでした。えへへー」
ふう、と携帯越しに溜め息が聞こえた。
『……メール読んだ?』
いつもなら返事が来るのに来なかったからだろうか。
いや、だってどう返せばいいんですか。
「あ、あれ?メール浅葱さんくれたんですか?気づかなかったー。あははっ」
嫌いってメールに何て返せと?
『そう、じゃ、早く見てね』
見たんですよ。見ましたから。
それと、と浅葱さんは続け、
『だから家に居てね。返事は直接聞く』
その言葉を最後に電話は切れた。



問題です。
嫌いと綴られた手紙にはそういうことだから返事を下さいと記されていました。

貴方ならどんな返事を出しますか?



あの後野々宮がそのメールを見せてくれと言うので見せたら、浅葱さんも素直じゃないだの何も今日じゃなくてもとブツブツ言いながら頭を抱えていた。
ついでに今終わった電話の内容も伝えると、
「待っててあげたらいいよ」
と、野々宮はじゃあ彼女と約束あるから、と行ってしまった。



そして家にいるんだけど。
嫌いの返事でここまでさせるのは異常だ。
「もしかして、絶交とか?」
そんなひどい!
言ってくれれば謝まるのに!!
……でも浅葱さんはそんな大人気ないことをする人だろうか?

・・・・・・・ジュースでも買ってこよう。
うん、そうしようかな。
ピンポーン
・・・居留守使おうかな。
ピンポーン
居なかった言い訳どうしよう。
ピンポーン
すみません、電波悪かったみたいで最後の部分聞こえなかったみたいで!よしこれで行こう!
ガチャン
え?

ーーーあ、そういえば鍵
「お邪魔します」
頭がいっぱいでーーー
「なんだ。いるじゃない。で?」



「何で居留守なんか使ったの」

閉めて無かった!

クールビューティな浅葱さんは静かに怒っていてクールさに更に磨きがかかっていた。
瞳には冷やかな色を宿していて。

俺はいたたまれなくなり目線を携帯におとした。
ちょうど16:00……あ、16:01になった。



―――そういえば今日って何月何日だっけと俺の頭はこの状況から逃げようともがいていた。
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