緋紅的牡丹

□女帝換質
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「最初、ハルを連れて来た時にはどうなるかとひやひやしたぜぇ・・・さすがにいきなり殺す事は無かったがよぉ・・・」

カス鮫が世間話でもしに来たのかというくらいに饒舌だった。報告書に眼を通している俺が無視を決め込んでいるにも関わらず、カス鮫の口はよく動いた。

もしかして、三浦ハルに感化されてしまっているのだろうか。

「ずいぶんと気に入ったみたいじゃねえか。」

「この殺した人数は何だ。俺は15人っつったのになんで14人になってんだ。」

「げ。」

「直してこいドカス」







三浦ハルは俺といる時間以外は談話室に殆どいるらしい。そこには暇をもてあましたヴァリアーの幹部が時々ふらりと来るらしい。

得にやってくるのはルッスーリアとベルらしい。

そんな情報は俺にはまったくもって無価値なのだが、三浦ハルの口は動きを止める事を知らない。エンジンはずっとフルスロットルのままだ。

ルッスーリアとはガールズトークをするらしい。まったく想像ができない。

そう言うと、ボスも女の子ですから、一度してみましょうよと誘われた。失笑を通り越して虚無だった。

それにそういう意味では無く、ルッスーリアとガールズトークという単語の不釣り合いさが頭の中の映像と音声にノイズを走らせたのだ。

ベルの趣味は人殺しであって、決して自分の肉体を筋肉で磨きあげようという人間ではない。

殺しができないのなら他で何か暇つぶしをしたいらしいが、ゲームも一人じゃつまらないらしい。ベルは案外群れるのを好む傾向がある。だがずっと大人数でいると鬱陶しがる。

三浦ハルは気まぐれな猫のようなんですよ。と笑って話していた。

確かに猫のような猟奇的な所はあるような気がする。

今日もまた紅茶を持ってきて、にこにこと笑いながら俺の前へ座る三浦ハル。

「そういえば、ボスはどうして自分の事を俺、というのですか?」

微妙なラインを超えてこなかった三浦ハルが、俺の中のアイデンティティに似た何かに言葉で触れた。

顎を殴られて脳が揺れるような感覚ではなく、ずっと正座をしていると足が痺れてきたような、そんな感覚がみぞおち部分から広がった。

熱い感情がわき出ることは無かったが、冷たい怒りが沸いているのは確かだった。

「・・・煩ぇ。」

その一言だけ言うと、三浦ハルはそれ以上何も聞いてこなかった。ただ単純に思ったことを口にしたのか、腹の中でずっと疼いていた質問をおそるおそる出してみただけなのか。三浦ハルは俺を否定も肯定もせずに、静かに紅茶を一口飲んだ。

「・・・甘い。」

「あ、バレちゃいましたか。」

一口目を口に入れた時に、舌に広がる甘さが今まで飲んできた紅茶よりも遥かに増していた事に気がついた。

悪戯がばれたと舌を出している三浦ハルが、にこにこと笑顔でこちらに顔を向けていた。

「おいしいですか?」

「甘すぎる。」

「ちょっとお砂糖入れただけですよ・・・?」

「こんなもん砂糖水じゃねぇか」

「それに入っている砂糖の量より、ハルはもっと入れてますよ?」

「信じらんねえ。」

一言そう放つと、三浦ハルが俺から顔をふと背けた。すねたのか、怒ったのかと思って珍しく眺めていると

「女の子はだいたいは、甘いモノが好きなんですよ。」

ぽつり、と漏れた言葉は紅茶に波紋も呼ばなかった。

ルッスーリアとの会話が思い出し、スクアーロがハルと気安く呼んでいたのも思い出す。ベルを猫のようだと言っていた事も、どうしてか思い出した。

瞬発的に怒りが一気にバロメーターを越したが、すぐに落下していった。

やはり三浦ハルは拗ねていた。俺をちらりと振り返りながら見ていた視線は何かを求めているようで。

唇を尖らせて、誤魔化すように紅茶を飲んでいる姿もまた、感情を如実に表していたのだろう。











甘いモノは女の子は好きなのだから、貴方も好きになればれっきとした女の子よ。

女の子はそういうのが好きなのに、貴方は好きじゃないなんて、男っぽいのね。



という二つの意味があります。

ハルはどちらの意味でそれを言ったのでしょうか?(知るか

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