DRRR!

□耳にタコ
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自称素敵で無敵な情報屋さん、の折原臨也は考えていた。
どうすれば池袋最強といわれる平和島静雄を手に入れられるかと。

(シズちゃんに話しかけようもんなら自販機が飛んでくるし、かといって力ずくでいこうもんなら標識が飛んでくるし…なんなのこれ。いじめ?なんていうか俺の扱いひどいよね。)

「ねぇ波江さん」

「何かしら」

「シズちゃんをさ、手に入れるにはどうしたらいいと思う?」

「……。」

「あれ?シカト?」


秘書である波江は毎日このような話をされてうんざりしていた。
昨日は『シズちゃんって背高いよね』。一昨日は『ちょっと聞いてよ!シズちゃんの頭がプリンみたいになってた!』だとか。
毎日毎日朝から晩まで出てくる単語はシズちゃんシズちゃんシズちゃんシズちゃん。

自重という言葉を知らないのかと、訊ねたくなる時もあったが、どうせこの変人のことだ。
『そのくらい知ってるよwww波江さんって実は馬鹿?www』とでも言ってくるだろう。
波江の脳内はいつの間にか《シズちゃん》という単語が聞こえると、瞬時にいとしい弟の顔が浮かぶようになっていた。
もう耳にタコどころの話ではないのである。


「あーあ。シズちゃんにあいたいなー。」

「…。」

「そうだ!シズちゃんに会いに行こう!」

「……。」

「じゃ、戸締りやっといてねー」

「……。」


波江は雇い主のデスクに置かれた山のような書類を眺める。
おそらくあれは目を通していない書類だろう。

(知ったこっちゃないわ。後で痛い目にあうのはあの人だもの)

山盛りの書類から目を離した波江は、胸ポケットから弟の写真を取り出し、暫し思いに耽っていた。






End.
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