厭そうに口を開こうとする大地の頭を掴んだ。ここぞとばかりにベッドに頭を縫い付けてやれば、普段の大地からは聞こえないような潰れた声が聞こえた。なんてひどい声!蓬生は仰向けの大地に軽い身体を跨がる。見下ろした先の歪んだ顔に蟇(ひきがえる)飼っとるん?なんて尋ねれば返ってきたのは否定の言葉と、思ったよりも随分落ち着いた笑い声。



「知らなかったよ、そっちのケがあったなんて」
「そんなもんないわ」
「じゃぁ、これは?」
「アイジョウノウラガエシ」
「ははは、随分痛い愛だね……まぁ、こっちだけでも理解できたけどね」



大地は右手に持っていたものをひらひらさせた。見慣れた包装紙に包まれたそれは―板型のチョコレートだった。ほんの数十秒前、土岐が“プレゼント”と称して大地に渡したものだ。しかも、大地が嫌いな甘い甘いホワイトチョコ。



「喜んでくれへんの?」
「喜んでくれると思ったのかい?」
「……あれ、ホワイトチョコやない?好きなもの」
「昨日、電話で嫌いなものを聞いてきたときに答えただろう?」
「んー?」
「老成しすぎてぼけたのかい土岐。惚(とぼ)けても駄目だ。おこるよ?」
「…うわぁ、怖いわぁ。これやから若い子は、すぐ怒って嫌なんよ。」



綺麗な三日月に形づくられた唇へとチョコを押しつけた。駄目。怒るよ。嫌やわ。怖いわ。飛びかう言の葉達は冷たいはずなのに、空間は反比例するように温くなっていく。土岐の藤色を触れる大地の指先にも絡む視線にも言の葉の刺は片鱗もない。土岐が微笑むと、途端に跳ねあがる空間の糖度。まるでチョコレートが部屋に融けていくみたい。



「どないしようね。せっかく横浜まで来たんやから、喜んでほしいんやけど……もう何も持ってないんよ」
「へぇ」
「後は、」



紡いだ言葉と同時に大地の視界に影が掛かった。身体を折り曲げた土岐の笑みを携えた顔が近づいて。さらさらと肩から流れる長髪は重力に従って下へ落ちる。視界には至近距離にある土岐の顔だけ。髪先が己の頬を擽るを感じながら、大地はまるで檻の中に居るようだなと脳内の片隅で思った。自分を捕えて離さない、愛しい藤色の牢獄。



「俺?ってしか言えへんよ。」
「一番欲しい台詞だね」



チョコを投げた手で土岐の頭に触れると、大地は土岐を引き寄せた。重なる唇は―きっとなによりも甘い。



…………………………………………………結城様より
頂いた大蓬でふ。はうああ。素敵(≧∇≦)
素敵な大蓬を有り難うございました。
是非是非サイト作ってください!←

本当に有り難うございました〜(≧∇≦)

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