血桜開花録
□秘密
1ページ/5ページ
あれから、土方さんと山南さん、そして蓮兄が帰ってきて、私は少しだけ秘密について話すことにしようと思う。
そういえば、蓮兄の怪我はそんなにひどくなく、無事だった。よかったなあと思ったり思わなかったり…。
そんな事を縁側で考えていたら、千鶴ちゃんが山崎さんに連れられてこちらに向かってきた。
「千鶴ちゃん!!山崎さんっ!」
私は手を大きく振って、二人を呼んだ。
「架蓮ちゃん、今日は非番なの??」
「ん?……たぶん。」
私が頭を掻きながら言うと、すかさず山崎さんがこう言った。
「君は今日…確か沖田組長率いる一番隊と巡察なはずだが??」
「え〜!!やだ。しかも総司でしょ?最悪。」
私が悪態をつくと、山崎さんの眉間のしわが一本増えた。
「君はそれでも組長補佐なのか?!」
「私、なりたくてなったわけじゃないし。でもここにきてよかったと思ってはいるかなって…、…二人とも呼ばれてたんじゃないの?」
私の一言に二人はハッとした表情をした。明らかに忘れてたって顔してる。
「そういえば、そのお呼ばれだけど。私の事も呼んでなかった?」
彼は頷いた。私は重い腰をあげて二人と一緒に副長さんの部屋に向かった。
私たちが部屋に着いて、中に入ると総司と平助がいた。二人は私たちを見てやっときた、というような顔をした。
「ごめんごめん。私を呼ぶために二人とも苦労したらしくてさ。」
そういって笑う私。するとそんなこともお構いなしに土方さんが口を開いた。
「お前に外出許可をくれてやる。」
「え?」
千鶴ちゃんは信じられないといった表情で土方さんを見る。
「鬼さんがいったいどういう風の吹きまわしですか〜?珍しい事もあるんもんですね。」
私が皮肉たっぷりに笑うと眉間に皺を作って、
「うるせえ。おめえは黙っとけ。」
と返事を返してきた。
「巡察する組に同行しろ。そしてその組の組長の指示に従え。」
場にいる人もそっちのけで話を進める土方さん。
「今日の巡察は確か総司、平助の組だったよな?」
「なるほどなぁ。だから俺と総司が呼び出されたのか。」
用件を伝えられてなかったらしく、二人は今、理解したというような表情になった。
「よかったね、千鶴ちゃん。この一歩は貴女にとってとても大きなモノに違いないと思う。どうか訪れた今日を大切にね。」
「…う、うん!!(架蓮ちゃん…?)」
すごい嬉しそうな顔をして私に笑いかけてくる千鶴ちゃん。
「お昼の巡察について行くんですよね。なら、千鶴ちゃん。準備してきな?私もすぐに行くから。」
「うん!わかった。早く来てね?」
そういって、千鶴ちゃんは部屋から出ていった。
「それで、私から…少しお話がありまして。でも千鶴ちゃんにはまだ話せない。ので、夜にでも幹部全員を広間に集めてもらえますか?」
私の真剣な眼差しに彼等も真剣に答えてくれた。
少しだけ、私のお話に付き合って下さいな。今の私たちの足場が崩れる前に……
.