桜蘭高校ホスト部

□「アイスティーと君」
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「馨?」


ソファで僕が呼んでも、君は本を読むのに夢中で


「ん? 何?」って言うだけで、本当は上の空。


「ねぇ、馨ってばぁ」


ソファの背もたれから身を乗り出して呼んでみても、ベッドの上に座って本を読む君の耳には雑音程度にしか届いてないみたいで


「ん? だから何?」って、随分とつれない返事。


本当は馨に構ってほしくてたまらないくせに、意地っ張りな僕はそれをなかなか言い出せなくて、またまた君の名前を呼んでみる。


「かーおるー!」


そしたらやっと君がパタンって本を閉じて、僕と視線を合わせてくれた。


「さっきっから何なの光? 用があるんなら手短にしてよね。今、これ読むので忙しいんだから」


なんてクール&ドライな台詞が返ってきて、僕は若干凹みつつも


「アイスティー飲む?」って、ぜんぜん関係ないこと訊いてみたりして。


「うん、じゃぁ、もらおうかな」


穏やかな笑顔。そして馨がベッドから降りて、ソファの背もたれを軽々と越えてすっと僕の隣に腰を降ろした。


ガラステーブルに乗ってるグラスを馨が持ち上げると、液体の中で氷が揺れてカランと涼しげな音を立てる。


「頂きます」


僕に笑顔で言ってから馨はグラスへと口を付けた。


アールグレイが馨の喉へと流れ込むのを隣で見つめながら、横顔綺麗だなとか、今いきなり頬にキスしたらどんな顔するかなとか、ぐるぐる想いを巡らせる。


「何?」


飲むのを途中で止めて、馨がこちらへと顔を向けて問うてきた。


見とれてました、なんて素直に言えない僕は


「いや、美味しそうに飲むなぁって思ってさ」なんて、また何でもない振りして適当な言葉を返す。


「そ? 光はもう飲まないの?」


空になった僕のグラスへと一瞬だけ視線を落としてから馨が言葉を続ける。


僕はまた、アイスティーなんかよりも馨の方が飲みたいです。なんて不謹慎なことを考えながら、


「うん、もうさっき結構飲んだから」と平静を装いつつ返す。


「そっか」


にこり。


目の前で、思い切り綺麗な花が咲いたみたいに思えた。


まぶしい! 馨の笑顔がまぶしすぎる!


「夏は、やっぱアイスティーだよね」


言って再びグラスに口を付ける馨を見つめながら、グラスになりたい、とかもう完全に訳わかんないことまで考えてみたりしてさ。


好き過ぎて、体の中全部が馨で満たされてる気分。


なのに何かが足りなくて。


僕はアイスティーを飲む馨の手からグラスを奪い取ると、それを一気に飲み干してグラスをテーブルへと音を立てて置いた。


馨が驚いた顔して、僕のこと見てる。


きょとん、って小首を傾げて、まるで女の子がしそうな愛らしい仕草で。


君は分かってるのかな?


いつもこんな近くで、そんな澄んだ瞳で僕のこと見つめて、もう耐えられないよ。


どうしてこんなにも僕を危険にさせとくの?


光? どうしたの? って、言う馨の言葉を最後まで待つこともせず、僕は馨の両肩に手を置くと、なだれ込むみたいに君の上に覆いかぶさった。


「ちょっ、いきなり過ぎるよ光!」


「ごめん、もう待てない!」


さらさらの前髪をかき上げて、額にキスをする。


「もう…しょうがないなぁ…」


口ではそんなこと言いながらも、極上の笑顔を見せてくれるのは君が僕のことを大好きだからだって自惚れてもいいのかな?


「大好きだよ、馨」


真夏の午後のディープキスは、僅かに甘くて爽やかなアールグレイの味がした。


〜Fin〜




 【後書きもどき】



一応、中学三年生くらいの設定で書きました。


なので二人の髪型は、サラサラのおぼっちゃまヘアって感じで想像してやってください。


それにしても光、どんだけ馨のことばかり考えてんだよ!って感じですね。


それに引き換え、馨のクールなことと言ったら。


このような稚拙な文章に最後までお付き合いくださり、どうもありがとうございました。


 

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