「ほんとにこんなのでいいの?」
放課後。西日の差し込む教室の片隅。小さい頃に使っていたと言うピンク色したウサギ形のかき氷機を机に出しながらハルヒが言う。
「これこれ! こんなのが欲しかったんだよ!
一度でいいから、かき氷ってのを自分達で作ってみたかったんだよね」
机の前に立っていた光と馨は声を揃えて言うと、両側からウサギの耳を掴んだ。
「おぉ、すんげぇ!! 回るよこの耳!」
はしゃいでウサギかき氷機の耳をぐるぐる回す双子を前に
「そこがハンドルになってるんだよ」と呆れながらも使用法を説明するハルヒ。その説明に、相変わらず垂れ耳をぐるんぐるん回しながら「ほぉほぉ、なるほどぉ」と光と馨が納得する。
そして耳から手を離して一言。
「このウサギさぁ、なぁんかハニー先輩の持ってるウサちゃんに似てない?」
そんな双子の台詞をどこで聞きつけたのか、
「えぇっ? 僕のウサちゃんに似てるのぉ?」と、どこからともなくハニー先輩が はしゃぎながらやってきて、「ほんとだぁ、お耳が垂れてる以外は、僕のウサちゃんと瓜二つだね☆」と嬉しそうに瞳を輝かせた。
「せ、先輩、一体どこから??」
冷や汗を浮かべつつ呟くハルヒに
「小さなことだから気にしない方がいいと思うよ☆」と宝物のウサちゃん片手に、ハニー先輩がウィンクして見せる。
そして呆然としているハルヒと常陸院ブラザーズなどお構いなしに、「せっかく寄ったんだから、ケーキ置いて行くね☆」と宣言するなり、どこから取り出したのやら、イチゴとメロンのトッピングされたホールケーキ三つをご丁寧に皿にまで乗せて机に置いてから教室を出て行った。
「なっ、なんなんだ…あの人は……??」
残された三人は、すっかり呆気にとられ、ただただこめかみに汗を浮かべるしかなかった。
「…このケーキどうする?」
一番初めに我に帰ったハルヒが、直径二十センチはありそうなほどのホールケーキをまじまじと眺めながら言う。
彼女の問いかけに光と馨が、かき氷も食べなくてはならないし、ケーキは一つでいいと即答したため、残りの二つは自動的にハルヒが引き取ることとなった。