土曜の放課後。リサイクルショップに寄ってから帰ると言うハルヒに、半ば無理やりくっついてきた常陸院ブラザーズは、店内に足を踏み入れたその瞬間から大きなカルチャーショックを受けていた。
「うぉ〜! 馨! こっちこっち!! 早く来てごらんよ!」
「なんなの、光!?」
周囲の客など者ともせずにはしゃぐ光のもとへと急いで馨が駆けて行ってみると、そこは洗濯機コーナーで、光は一昔前の二槽式洗濯機を前に立って澄んだ瞳を更にキラキラさせているのだった。
「すんげぇよなぁ! こんなのでも洗濯できんのかなぁ?」
「だよねぇ。なるほど、左側が洗濯槽で、右側が脱水槽になってるのか」
ふむふむ、と二人で納得しあう光と馨を遠巻きに眺めながら、ハルヒはやれやれと苦笑を浮かべる。そしてお目当ての扇風機を見つけると、「あ、あったあった」と笑顔で店の奥へと駆け出す。
「あれっ? ハルヒは?」
先にハルヒが居ないことに気づいた光がそう言うと、馨も「あれ? さっきまでその辺りに居たのに」と店内の隅々に視線を走らせる。
「あっ、ハルヒみーっけ!!」
さすがは双子。まったく同時にハルヒを発見すると、一目散に店の奥にある扇風機コーナーへと駆け出した。
「へぇ、2980円かぁ。結構安いし、これにしよっかなぁ?」
ハルヒが、クリアブルーのプロペラの比較的新しい扇風機の購入を決めようかとしているところへ、光と馨がやってきて彼女の両側に立った。
「わぁ、何これ!? ボロいのばっか!」
「光、そんなこと言っちゃ失礼だよ。
エアコンのないご家庭では、こう言う古めかしいスタンドタイプのファンが主流なんだから」
うわ、馨にしては珍しくサラっと失礼なこと言うなぁ;;
そんな風に、ハルヒが額に冷や汗を浮かべつつ思っていることなど露知らず。双子の会話は弾んでいた。
「僕、扇風機なんて見るの初めて! だってうちにはシーリングファンしかないんだもんなぁ」
「だよねぇ。あんなんじゃ、ちっとも涼しくなんてならないもんね。
て言うか、エアコンの風を循環させてるだけで、扇風機とは違うし」
「ね、馨、せっかく来たんだからさ、買って帰ろうか?」
「いいね。そうしよう!」
意見が一致したところで、常陸院ブラザーズもハルヒが購入しようとしている扇風機と色違いの物を購入することに決めてレジへと向かった。
「カードでお願いしま〜す! あ、この子の分も一緒に払っておくから宜しくね」
見事なまでにハモって言う美形双子を前に、若い女性店員もたじたじと言った様子で頬を染めつつレジを打つ。
もちろん「いいよ、3000円くらいなら持ってるから!」と必死に訴えるハルヒの意見なぞ、双子の耳にははなっから届いていない。
そうして買い物も無事に終わり、店の外でハルヒと別れた光と馨は、帰りにコンビニに寄って棒アイスを二本買ってから家に戻った。
もちろん、たとえアイス二本であっても、カードで支払うのが常陸院流。
中年おばはんやら女子高生、はたまたご老人達の視線を一身に浴びていたとしても、気にしな〜い気にしない☆