夏の終わりの昼下がりは、いつもよりも時が緩やかに流れているようなそんな錯覚さえ覚える。
愛する人は今日も朝から仕事なので、氷河は家事をある程度済ませてからは自分の時間をのんびりと過ごすことにしている。
さっと水でシャワーを浴びて汗を流した後、ランニングシャツとショートパンツと言うラフな格好で寝室へと入る。
開いた窓から熱を含んだ夏色の風が流れ込み、氷河の洗い髪を優しく撫でて通り過ぎた。
やたらとのんびりしている…。まるで時間ごととろけてしまいそうなくらいに…。
何となくベッドに横たわり、深緑の香りを胸に吸い込んで瞼を閉じる。
瞼の裏に浮かぶのは、あの人の穏やかな笑顔。それだけでもう時間ごととろけてしまいそうだった。
緩やかな時の流れに身を投じ…浅い夢の縁を漂う。
ふわり…と瞼に柔らかな感触。
夢か幻か、ゆっくりと目を開けば 上から見下ろす温かな眼差し。
「カ…ミュ…」
何故ここに?そう思った。けれど、その次の彼からのセリフで全てを理解する。
「昼休みなので一度戻ってきた。やはり、お前のことが気になってな」
前髪を撫でてくれるその手は、いつもと変わらず優しくて…
そのまま氷河は自然と心地の良い眠りへといざなわれて行った。
−−とろけそうな昼下がり…幸せの漂うまどろみの中で−−
〜Fin〜