風呂上り、カミュがキッチンでカクテルとレモンスカッシュを作っているところへ氷河がやってきて、後ろから抱き付いてきた。
「ねぇ・・カミュ」
背にピッタリと頬をくっつけて、甘えた声で呼んでくる。
「なんだ、氷河?レモンスカッシュなら もうすぐできるぞ」
肩越しに彼を見下ろしカミュが淡く微笑んでそう言うと、氷河は上目づかいにカミュを見つめて
「こうやって くっついてたいんです。今夜は冷えるし…」と無邪気な笑顔で答える。
本当は寒さなんて、どうってことない。ただカミュに甘えたいだけ−−。
けれど、素直にそれを伝えるのは照れくさくて、ついもっともらしい嘘をついてしまう。
「そうか。もう12月も半ばだからな。確かに今夜は少し冷え込みが厳しい気もする」
カミュはあっさりとだまされてくれたらしく、温和な笑顔を見せると、氷河のくせっ毛を優しく撫でた。
そしてカミュがトレーに、できたばかりのカクテルとレモンスカッシュを乗せて歩き出すと、氷河も彼の腕に自分の腕を絡ませて共に歩き始めた。
「ねぇ、カミュ」
「ん?」
「昼間 俺、ストロベリームース作ってみたんですよ。食べてみてくれますか?」
そう言いながら屈託なく笑う少年の愛らしいことと言ったら、もうカミュの心の中は冬を飛び越えて春満開状態である。
「あぁ、もちろんだとも。お前の作ってくれたものならば、私は何だって喜んで食べよう」
「うわ☆ 本当ですか?」
ぱーっと桜の咲き誇るような笑みを見せると、氷河は喜び勇んで冷蔵庫のもとまで駆け寄った。
そして冷蔵庫から、ハート型のカップに入ったストロベリームースを2つ取り出すと、食器棚の引き出しから銀のスプーンを1本取り出した。
何故氷河がスプーンを1本しか用意しなかったかについては、その後の2人の行動をお読みいただければ明白であろう。
リビングに到着した2人。ここに到達する間も、終始ベッタリと身を寄せ合っていたのだが、これからが更にエスカレートすることとなる。
まずカミュがソファに腰かけ、そして極自然に彼の膝の上に氷河が着席する。
それから2人グラスを手に、これからの2人の明るい未来を願いつつ乾杯☆ カーン!(グラスのぶつかり合う音)
「さ、カミュ、どうぞ食べてください」
満面の笑みで氷河はスプーンでピンク色のムースを掬い、カミュの口元へと運ぶ。
カミュもそれを極自然に頬張り、「うん、美味いぞ氷河」などと言いつつ味わうのである。
そして今度はカミュ。氷河の手にしていたスプーンを受け取ると、ムースを掬って氷河の口元へ。
またしても極自然に氷河もそれを頬張り
「ほんとだ。結構美味いですね☆」などと答えながら微笑む。
こう言うことが日常的に極自然に繰り広げられているのである。
それが、この11番目の宮 宝瓶宮の実情であった。
確かにこれではスプーンも1本で事足りてしまう。
その後ムースを食べ終えた2人は、何を思ったのか いきなりのディープキス!!
「イチゴの味がしますね…」
そんなことを頬を赤らめながら呟く氷河を抱きしめながら
「ストロベリー風味の氷河・・お前も甘くて魅惑的だ…」などとサラリと言えてしまうあたり、やはりカミュはフランス人なのだと改めて実感させられる。
その甘いセリフにまだ14歳の少年はあっさりとノックダウン!
一気に首筋まで桜色に染めると、うっとりした瞳でカミュだけを見つめている。
「…氷河…お前が好きだ…!
愛しても…愛しても…愛し足りない…!」
耳元で甘く囁くと、カミュは氷河をそっと押し倒した。
それから、額や頬に優しいキスの雨を降らせ、首筋にかかる金の髪をやんわりと掻きあげ紅い花びらを刻み付ける。
氷河の息が荒くなり、アイスブルーの瞳が湖面のように揺らいだ。
「…カミュ…俺、あなたを愛しています…。
いっそこのまま溶けて泡になりたい…!そして…あなたと1つに……!」
2人の陰が重なり合う。
甘い吐息は冬の空気に穏やかに溶けた−−。
〜Fin〜
【後書きもどき】
思いっきりイチャベタさせてみました(笑)
2人の日常は、こんな風にとろけるほどに甘くて、いつだって仲良しさんで居てほしいと言う管理人の願望ですvv