Fantasic★Travel

□02.いろいろな苦難-A
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バチッとハルと目が合った。
火花が散って同時にお互い反対の方向を向く。

シドは肩をすくめて溜め息をついた。





「シド、がんばって!!応援するから!!」
「シドがんばろうぜ。こんな奴置いてさっさと行こうぜ」
「シド怪我しないでね。いざとなったらこのチビを盾にし……あ、小さすぎて無理か」
「なんだと!?」
「なによ!!」


お互いに睨み合い、バチバチと激しく火花を散らした。
シドは眠そうに、欠伸をした。



「ほらほら2人共行くよー。あ、リマちゃん」
「え?」


目の前のドチビから目を離してシドを見た。
「なに?」

頭の上に手を置かれ、シドは屈んで目線を合わせてきた。
「俺とハルが試合に出てるときは変な奴について行っちゃ駄目だからね?」
「つ、付いていかないしっ!!」

むう、と膨れる。
まるで小さい子に言い聞かせているようでムカつく。だってあたし、16歳なのに!!



「リマちゃん可愛いから声かけられやすいんだから、気を付けてよ」
すらすらと恥ずかし気も無くそんな台詞をいい、微笑んだ。
逆にこっちが照れてしまう。


綺麗な金髪に天使のような笑顔。
この笑顔に何人の女の子達が騙されてきたのか…
あたしはシドの彼女だと名乗る大勢女の子達が喧嘩していたのを学校にいるとき、よく見かけた。 


たらしって言葉、シドのためにあるんじゃないかしら。
絶対にないと思うけど、あたしもこの毒牙に引っ掛からないように気をつけなきゃ。



「…リマちゃん、心の声がでてるよ」
「え!!?」

うっすらと微笑むシド。
目が怖いくらい笑っていなかった。


「あ…あはは…?」
乾いた笑いで誤摩化す。



「心外だなー、俺は女の子達を騙したことなんてないよ?ただ…


あっちが勝手に勘違いするだけなんだ」






シドの笑顔に周りの気温が-5度くらい下がった気がした。

あ、あれ…?
いつもと同じ顔のはずなのに恐ろしいほど目が笑っていないことに気がついてしまった。
シドのいつもの笑顔って作り笑いなように思えるほど。
いや、もしかして本当に‥




ハルを横目で見ると嫌そうに顔を引きつらせシドを見ていた。

「ほらほら行くよー。リマちゃん、賞金欲しいんだろ?」
「え、あ、うん…」
「まあ参加するのは俺らだけど、まあ一緒に旅をしているからリマちゃんの賞金にもなるもんねー。よかったね、何もしなくていいなんて」

にっこりとそう言う笑顔が眩しい。

「う…、ごめんなさい」
「あはは、なに青くなってんのー。ハルも。遅刻しちゃう」


眩しいくらい冷たい笑顔に、あたしは何回も頷いた。
あのハルでさえ大人しく口を開こうとはしない。






ーーシドの新たな一面を知ってしまった瞬間だった。
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