Fantasic★Travel

□01.いろいろな苦難
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夜明けの午前4時。
ここはモーリス村の門の前。


木々は芽吹き始めこれから花の季節。とはいえ、まだ辺りは薄暗く、寒くてあたしはぶるっと身震いした。



当たり前だ。

こうして30分動いていないのだから。
そして30分前からあたしの眉間にはしわが刻まれている。


あたしはモコモコしたピンクのカーディガンをぎゅっと握りしめた。

そう、問題はこのカーディガンにあるのだが。




あたしは目の前の赤毛を睨みつける。


「…脱げ」
「いやよ」
「脱げって言ってんだろ」
「嫌って言ってんでしょ」


ずっとこの不毛なやり取りが繰り広げられている。

あ、別に「脱げ」とか言ってるけどそうゆう会話じゃないの。
とゆうかコイツとそんな会話することなんて一生ない。

これは喧嘩。そう、いつもの喧嘩。
もう当初の問題なんて関係ない。
これはもうどちらかが折れるかの勝負と化していた。


「そのカーディガンは旅向きじゃねえ!!置いて行け!!」
「なんでもいいでしょ上着なんて!!」
「なんでもいいならその荷物の中身は何なんだよ!!」

ハルが指を指すのはあたしの荷物。
パンパンに膨れ上がっているソレ。


「服」
「豚1匹丸々入りそうな大きさがか!!??」
「必要なんだもん!!」



最初は欠伸をしながら見物していたシドはいつのまにか居なくなっていた。


「ねえキミ可愛いね、俺の魔法で虜にさせちゃいたいくらいだよ」
「やーん!シド君なら魔法使わなくても虜にさせちゃうでしょー」


…いた。


この女好き男は決まった口説き文句で女の子をはべらかしていた。
あたしはその台詞を5回くらい聞いた事がある。






「おいコラ、チビ女。いいかげんにしないと置いてくぞ」



なんてムカつく声だろう。
あたしはピキッと頬を引き攣らせる。


「なによ極小チビ、こっちの台詞よ!置いて行けば!?あんたなんかと旅なんてこっちから願い下げよ!!こっの豆粒チビ男」
「あ!!お前もチビって2回言ったな!!?お前の方がチビのくせに!!」
「はあ!!?なんですか、男のくせに女と競っているんですか、身長だけじゃなくて器まで小さいんですね!!」
「んだとコラア!!」

「はいはいうるさいよー2人共」


シドがあたし達の襟を掴んで引き離した。

いつのまにか女の子とはバイバイしたみたいで…よく見たら白いシャツの襟元に紅い口紅が付いている。


…なにしてたんだ。


あたしはうんざりとした気持ちでシドを見た。




 

 
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