一般の館

□さよなら、大好きな人
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『愛する王子様を殺すことのできなかった人魚姫は、ナイフを投げ捨てました。人魚姫は王子様にキスをするとそっと部屋を出て、海に飛び込みました。
そして、人魚姫は泡となって海の中に消えてしまいました。』


幼いころ、ママがよく読んでくれたたくさんの童話。
その中で嫌いだったのは、『人魚姫』。
王子様と結婚もできずに泡となって消えてしまった、可哀想なお姫様。
本当の命の恩人が誰かも知らずに、別のお姫様と結婚してしまったバカな王子様。

私が好きだったのは、お姫様たちが王子様と結婚して幸せになる話。
お姫様なのに幸せになれなかった人魚姫は、私の夢とは全然違っていた。

人魚姫の物語は夢を壊すものでしかなかった。
私にもいつか、素敵な王子様が現れると信じていたから――――。



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