一般の館

□儚い光に願いを乗せて
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「暑い」

「うん、そうだね」

「そうだね、って・・・。あのねぇ光里[ヒカリ]。汗一つかかないあんたに言われると若干ムカつく」

「そんなこと言ったって。これで私が否定したって、茜[アカネ]怒るでしょ?」

「まぁね」

「まったく・・・」


理不尽な親友の言葉にため息をはく。
でも、茜の言い分もわからなくはない。今年の夏は特に暑いから。


「クーラーはあんまり使いたくないしなぁ」

「ああ、茜嫌いだもんね」

「あの人工的なのがダメ」

「の割に暑がりなんだから・・・。なにかないかな・・・」


そう呟いた時だった。


―『・・・ほら、こうすれば涼しいでしょう?』

「っ!?」


突然聞こえた声に思わず振り返った。


「光里?どうかした?」

「今、声が・・・」

「声?」

「聞こえなかった?『こうすれば涼しいでしょう?』って」

「聞いてないよ、そんなの。・・・大丈夫?暑さで幻聴でも聞いたんじゃない?」

「・・・そうかも。ごめん」

「いいよ。あ、じゃあ私はここで。ちゃんと水分取るんだよ」

「うん、ありがと。バイバイ」

「また明日」


手を振りながら去って行く茜を見送りながら、先ほどの声を思い出す。



あの声を聞くのは、初めてではなかった。最初に聞いたのは一ヶ月前。
あれから、ふとした瞬間に男の人の声が聞こえてくる。
幻聴と言ってしまえばそれまでだが、そうとは考えられない。第一、幻聴でもそれはそれで困る。


(誰なんだろう・・・)


あんな声をしている人は周りにいないのに、どこか懐かしさを感じる優しい声。


(あ、また・・・)

―『待っていてください、――』


今度は、誰かの名前を呼んだみたいだ。聞き取れなかったけれど。

頭の中に直接響く声は、そんなはずはないのに私に話しかけているように感じた。






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