キミと〜シリーズ

□まだ兄妹でいいんです
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「紗弥ちゃん!!彼氏できたってマジ!?」

「え・・・、はい?」


放課後、教室に響き渡った傍迷惑な来訪者の声に、紗弥は盛大に顔をひきつらせた。


「マジで!?藤森彼氏できたのかよ!」

「紗弥ちゃんやったじゃん!で、どこの誰!?」

「年上?年下?カッコいいの?」

「お、俺の藤森が・・・」

「いや、お前のじゃねぇし。その妄想は痛いぞ、坂田」

「え、いや、あの・・・」


途端にざわめき出す教室。
紗弥は元凶である潤を廊下に追い出し、キッと睨みつけた。


「潤先輩、何訳のわからないこと言ってるんですか。どうしてくれるんです、これ」

「あ、いや、それはごめん。え、じゃあ彼氏できたってガセ?」

「当たり前じゃないですか。って言うか何ですか、嫌味ですか。省吾先輩に振られた私への嫌味なんですか!?」

「落ち着け、藤森」

「気持ちはわからんでもないけど、丸聞こえやで。紗弥ちゃんらしくもない」


ヒートアップする紗弥に、冷静な声がかかる。


「省吾先輩、勇司先輩。・・・すいません、お見苦しいところを」


急に恥ずかしさが生まれ、シュンとうなだれる紗弥。


「いや、幸い中には聞こえてないみたいだし、大丈夫じゃないか?」


教室を覗き込んだ省吾が言う。
省吾の言う通り、クラスメート達はまだギャアギャアと騒いでいた。
これなら、先ほどの会話も聞こえていないだろう。


「で、ガセなんだな?」

「はい、もちろん。誰なんですか、そんな噂流したの」

「ん?うちのクラスの関山」

「っ!?」


聞き覚えのある名前に、思わずこめかみを押さえた。


(あーさめ・・・、何か変なこと言ったわね・・・。いや、それよりもあり得るのは・・・)


“仕返し”。

その単語が思い浮かんだ瞬間、背筋に冷たいものが走った。


(ああああ〜〜〜!だからあーさを独占したくなかったのよ、関山先輩意外と嫉妬深いんだから!!)

「さ、紗弥ちゃん?どうした?具合でも悪くなったか?」


頭を抱えて唸る紗弥に只ならぬものを感じたのか、恐る恐る潤が問いかける。


「違います大丈夫ですちょっと混乱して関山先輩の所に乗り込みそうになってるだけ・・・」


答えになっているかもわからないことを口走っていた紗弥は、ハッと顔を上げ、そして、


「ちょっと関山先輩の所に行ってきます!」


脈絡なくそう叫ぶと、省吾たちが止める間もなく走り去って行った。
紗弥の心中など読めるはずもない三人は、あまりに突飛すぎるその行動にただ驚愕で立ち尽くすだけだった。


「えーっと・・・?あれは追いかけるべきなんか?」

「いつものあいつなら放っとけるんだけどな。あれはそうもいかないだろ」

「何悠長なこと言ってんだよ二人とも!姫のご乱心だぞ!?」


唯一、ハッと何かを感じ取った潤が慌てて紗弥を追いかける。
そんな彼を見て、またも取り残された省吾と勇司はため息をついた。


「お前が一番“ご乱心”だっての、バーカ」

「姫って・・・。さすがの俺でも言わんなぁ」

「なぁ、何かもう放っといて帰んねぇ?」

「めっちゃ嬉しいお誘いなんやけど、せめて紗弥ちゃんの荷物持ってくくらいはしたろ?ちゅーか、さっき放っとけヘんて言うたばかりやで」


面倒くさい、と顔にありありと書かれている省吾を宥めながら、勇司は教室に入りクラスメートから紗弥の荷物を受け取った。
その際、カリスマ性ナンバーワンの元生徒会長と、数々の浮いた話を作り上げたたらし二人の登場に、教室中が沸いたのは言うまでもない。
そして、それにより省吾の機嫌が悪くなったのも。



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