キミと〜シリーズ
□彼とアナタは近すぎて
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省吾に振られたその日の放課後、紗弥は一件のカフェに入った。
「いらっしゃいませ。お一人様ですか?」
お決まりのフレーズを営業スマイルで言う若い男性店員に、いえ友人が来ていると思うのですが、と店内を見回す。
すると、
「紗弥、こっちこっち」
と自分を呼ぶ声が聞こえた。
そちらを見ると、会う約束をしていた友人が手を振っていた。
「すいません、見つかりました」
ニコッと笑い、店員に礼を言うと紗弥は目的のテーブルに向かった。
「久しぶり。ゴメンね、あーさ。急に呼び出して」
「いや、別に暇だったから良いよ。それより紗弥、あんた相変わらずなのね」
呆れた顔で、中学時代からの紗弥の友人――宮川麻子は開口一番にそう言った。
「え、何が?」
言葉の意味がわからず、キョトンとすると、ほらあれ、と入り口の方を顎でしゃくられた。
紗弥が振り返ると、先程の店員がジッとこちらを見ていた。
目が合った瞬間、パッと逸らされたが。
「かわいそーに。あれは惚れたわね」
可哀想だなどとは微塵も思っていないだろう口振りの麻子は、面白そうにククク、と笑った。
「いやー、安心したわ。この前は全然話せなかったけど、いつになっても紗弥は紗弥ね。一人暮らしも問題なさそう。色んな意味で」
「ちょ、それどういう意味」
「そのまんまよ。大丈夫、褒めてるんだから」
バカにされたような気がして、むー、と膨れてみせるが麻子には通じない。
まるで子どもを諭す大人のようにあしらわれてしまう。
省吾達をも翻弄する紗弥だが、昔からこの友人にはうまく丸め込まれるのだった。
「で、こっちは色々聞きたいことがあるんだけどいい?」
「・・・ヤダって言ったら?」
嬉々として聞いてくる麻子に、一応は傷心の紗弥は最後の抵抗を試みる。
しかし、そんなものが効くはずもなかった。
「何言ってんの。昨日の夜誘ってきたのはあんたでしょ。そこは、きっちりかっちりはっきり聞かせてもらうから。ほら、覚悟決めて話しちゃいなさい」
正論すぎてもはや反論すらしたくない麻子の言葉に、渋々紗弥は口を開いた。
「あのね・・・」
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