キミと〜シリーズ
□いつかキミが出会ったら
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突然で恐縮だが、私の親友は鈍い。
「え?おススメのカフェ?」
「そ。あーさって普段からけっこう行ってるでしょ?いいお店知ってるんじゃないかと思って」
「そりゃまぁ知ってるけど。・・・でもなんで?」
「秋田君が今度の日曜日に買い物に付き合ってほしいって。で、お礼にお茶ご馳走してくれるって言うんだけど、私そういうの疎いし・・・」
「なるほどね。わかった。・・・・・・ところで紗弥?」
「ん?」
「なんて誘われたの?そのお出かけ」
「え、普通だよ?付き合ってほしいって」
「うん、そうか。で、あなたの返事は?」
「『どこに?』って」
もう一度言おう。
私の親友は鈍い。
そりゃもう相手の男が可哀想になるくらい鈍い。
藤森紗弥。
この市立高八木中学校で1、2位を争うほどの美人で、頭も性格もいいとくれば男共が放っておかないのは当たり前。
なのだが、
「紗弥、それ絶対意味違うって・・・」
とにかく天然なのだ、彼女。
他人のことには恐ろしいほどに勘が働くくせに、自分のことになると残念なくらい疎くなる。
いったい何人が『どこに?』の一言で撃沈していることか。
まぁ、『好きです』とも言わずに『付き合ってくれ』なんて言う相手にも非があると言えばそうなのだが。
「あーさ?」
キョトンとした顔が可愛いなこの子・・・ってそうじゃなくて。
「紗弥ってさ、わざとなの?」
「なにが?」
うん、わかってたよ。
わざとなんかじゃないってさ。
あなたはそんなに器用じゃないし、いつでも本気なんだよね。
「はぁ・・・。紗弥が好きになるのってどんな人なんだろうね」
「どうしたの、あーさ。なんか変だよ?」
「彼氏できたら紹介してね」
だってほら。
その相手はこの超絶鈍感な紗弥への告白がうまくいった人か、紗弥が本気で好きになった人ってことでしょ?
どんな人なのか、親友としてちゃんと見ておきたいじゃない?
「えー、紹介以前に相手いないからなぁ」
「うん、それはあなたの鈍さが少しでも減れば解決すると思う」
「・・・?」
「ま、今すぐにとは言わないけどさ。あー、でもそんなこと言ってたら真面目にいつになるかわからないか・・・」
「あーさ、やっぱり変。具合でも悪いの?保健室行く?」
ホント、涙が出るくらいいい子なんだよね。
「いや、大丈夫」
「ホント?」
「ホントホント。私が丈夫なの、紗弥だって知ってるでしょ?」
「それはそうだけど・・・」
「わかってるなら、そんな顔しないの。ほら、笑いなさい。お店教えるから」
「うん、ありがとう」
たぶん紗弥の相手は中学校では見つからない。
なんとなくだけど、そんな気がした。
まぁ、あと半年で受験って身分の私たちにそんな時間はないっていうのが根拠だけどね。
私と紗弥が目指す高校は違うから、紗弥の相手は私の知らない人になるかもしれない。
でも、紗弥が選んだ人だから、きっといい人なんだろうね。
「ねぇ、紗弥」
「なに?」
「あー・・・いいや。なんでもない」
「え、なにそれ。気になるでしょ。言ってよ」
「ヤダ」
「あーさってば」
「ヤーダ」
幸せになって、なんて、私の柄じゃないから。
だけどね?
私は親友として、あなたの幸せを誰よりも願ってるから。
「今度紗弥が呼び出されたら私もくっついて行こうかな、小姑として」
「?」
「いや、こっちの話」
相手が見つかるまで、紗弥の隣は私のもの。
さぁ、可愛いこの子が本気になるのは、いったいどんな人なのかな。
それは紗弥が大切な人と出会う1年ほど前の、教室で交わした1つの話。
end
→あーさの設定