キミと〜シリーズ

□これからの彼ら
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翌日の昼休み、省吾は屋上に向かっていた。
鉄の重い扉を開ける。
外に出ると扉を閉め、周りを見渡すが、紗弥はまだ来ていなかった。
何となく安心した省吾だったが、


「省吾先輩」

「っ!?」


突然かけられた声にビクッと肩が揺れた。
誰の声なのかなんて振り向かなくてもわかる。
何度も聞いた声だし、そもそも今日ここで会う約束をした人間は1人しかいない。


「何ですか、人をお化けか何かのように」


少しムッとした声に思わず出るのはため息。


「藤森・・・。いきなり声かけるな。ビビるだろうが」

「それは失礼しました。いきなり肩叩くより良いと思ったんですよ?」


今度は困ったように笑う。
前に比べて自分に見せる表情の種類が多くなったのは気のせいではないだろう、と省吾は思った。


「とりあえず、外に出ませんか?ここじゃ暗いですし」


促されるまま屋上に出る省吾に続き、紗弥も明るい場所に足を進めた。
扉を閉めて省吾に向き直る。
と、先ほどまで目の前にいたはずの省吾がいなくなっていた。


「・・・先輩?」


ぐるりと周りを見渡すと、藤森、と自分を呼ぶ声がする。
声の方に顔を向けると、省吾が給水タンクの傍に座って手招きをしていた。


(いつのまに・・・)


置いて行かれたことに若干腹を立てながら、それでも呼ばれるがまま給水タンクに近寄った。
ポンポン、と自分の横を叩いて座るように促す省吾。
それにも素直に従うと、2人の間に沈黙が流れた。
そんな気まずさを払拭するかのようにザアッと風が吹いて、2人の髪を揺らす。
それを皮切りに、省吾が口を開いた。


「前にもあったよな、こんな感じで座ってたの」

「ありましたね」

「デジャブってやつか?」

「前とは状況がだいぶ違いますけどね」


2人とも数ヶ月前のことを思い出していた。


「何だか、私はいつも先輩を追いつめている気がします」


あの時も、今も。


「はっ、確かにな」


自嘲気味に笑う紗弥だったが、省吾はそれを一蹴した。


「いいんじゃねぇの?全部お前の本心なんだろ?」


変に隠されるよりはマシだし、どこか他人に対して壁を作るこの後輩の素を見られるのは嬉しかった。


「またそうやって、あなたは私を甘やかす・・・」


だから諦められないのだと、苦笑気味に言葉を紡いだ。


「本題に、入りましょう」






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