キミと〜シリーズ
□その後の彼ら〜夕〜
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side 省吾&勇司
「省吾、帰ろ」
授業もホームルームも終わって1時間後、勇司は省吾の元に寄った。
だが、省吾はボーっと窓の外を眺めたままだ。
(あかんわ・・・。ったく、紗弥ちゃんもなんちゅータイミングで言ってくれんねん)
紗弥のことだからいつかは言うだろうと思っていたが、まさか勇司も潤もいるあの場で言ってのけるとは思わなかった。
省吾としてもショックだったのだろう。
午後はずっと放心状態で、フラフラと幽鬼のような顔で動く省吾は当然周りの目を引いた。
勇司と潤はそんな省吾をフォローしようと必死だったが、どの程度効果があったかはわからない。
しばらく待ってみようと、授業が終わってからは省吾の様子を見ていた勇司だが、日が暮れてきたこともあり、ここまでかと諦めた。
「省吾!」
全くこちらを見ようとしない省吾に、声を大きくして再度呼びかける。
そこでやっと振り向いた省吾の顔は相変わらず呆けたもの。
それでも、目だけは「なんだ」と僅かだが不機嫌そうな色を宿しているのがわかり、勇司は思わず苦笑した。
「暗くなる前に帰ろ?ほら」
と、手を差し出せば、省吾はそこで初めて自分たちしかいないことに気づいたようだった。
「あ・・・、悪い」
気まずそうに顔を逸らす省吾に、勇司はまた苦笑すると、優しい声で、ええよ、と返した。
「・・・潤は?」
「用事あるとかで、先帰ってくれ言われたわ」
「そうか」
「なぁ、省吾」
「ん?」
「あー・・・、いや、ごめん。なんでもない」
なにか言いたそうな顔のままでそんなことを言われても、省吾は当然納得できない。
「なんだよ、言えって」
立ち上がって問い詰めるが、勇司は困ったように笑うだけで話そうとしない。
「勇司!」
「わかった、わーかった。帰りながら話すから。それでええやろ?ほら」
声を荒げる省吾に、降参、と手を挙げながらカバンを手渡した。
「ごまかすんじゃねぇぞ」
「そんなことせぇへんよ」
そう言いながら、まるで子どものように頭を撫でられ、省吾の顔が赤くなる。
そして気恥ずかしさを隠すように、バッとカバンを奪い取ると、省吾は教室を飛び出した。
やっといつも通りになった省吾に、そっと安堵の息を吐くと、勇司は省吾の後を追うように教室を出た。
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