キミと〜シリーズ

□その後の彼ら〜昼〜
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キーンコーンカーンコーン・・・


「よし、今日はここまで。明日はここの確認をするから、ちゃんと解いて来いよ」


昼休み前の授業が終わる。
教師の言葉ははたして聞こえているのかと思うほどの騒がしさが教室に広がる。
一応3年生、つまりは受験生のクラスなのだが、この時間だけは別だ。
腹が減ってはなんとやらとでも言うのか、昼食時間だけはしっかりと確保する生徒たち。
それは省吾たちも同様。
紗弥と一緒に屋上で食べることが当たり前になった彼らは、今日も今日とて屋上に向かおうと教室を出た。



「さーやちゃん」


屋上の扉を開けると、そこにはすでに来ていた紗弥の姿。


「早かったね」

「ええ、4時間目の授業が斎藤先生でしたから」

「ああ、なるほどね」


紗弥の出した名前に納得する。
授業をサクサク進めて時間前に終わらせることで有名な音楽教師。
いい加減に思われがちだが、ユニークな授業と人柄から、なかなか人気のある教師だ。


「和也サンかぁ、なんか懐かしいな」

「ああ、3年生は音楽ないんですよね」

「そうそう。受験には必要ないからね」


若干の嫌みを込めた潤の言葉に紗弥は苦笑した。
そして、先ほどから気になっていた疑問を口にする。


「あの、会長と勇司先輩はどうしたんですか?」

「省吾が神谷サンに呼ばれてね。勇司は省吾待ち。その後購買行くって言ってたから」

「購買ですか。・・・珍しいですね」


紗弥がそう言うのも無理はない。
省吾と勇司が付き合いだしてから、勇司が2人分の弁当を作っていたのだから。
もともと1人暮らしで家事はお手の物と言わんばかりの勇司にとっては苦ではないらしく、毎日なかなか見事なものを作ってきていた。


「寝坊、だってさ」

「寝坊?」

「正確に言うと、目は覚めてたけどベッドから起きる気しなかったらしい」

「?」


見事なクエスチョンマークが紗弥の頭に浮かぶ。
わかるように話してくださいと目で訴えかける紗弥に、次の言葉で意味がわかるだろうと思いながら潤は口を開いた。


「昨日、省吾が泊まったんだってさ」

「よくわかりました」


即答。
さすが、と思い苦笑しながらも、潤は紗弥の顔に影が落ちたのに気づいた。






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