キミと〜シリーズ
□その後の彼ら〜朝〜
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「・・・またかよ」
目の前の光景に大きなため息をはく。
「本当に」
「っ!?」
独り言に返事が返ってくるとは思わなかった。
その声の主は潤の隣で、先ほどの彼と同じように目の前を見つめていた。
「吃驚したぁ。紗弥ちゃんか」
「おはようございます、潤先輩」
「ん。おはよ」
突然現れた後輩――藤森紗弥に声をかければ、それに反応するかのように顔を向け挨拶をしてくる。
しかし、それも一瞬のことで、潤の肩ほどにある頭はすぐに向きを変え、再び目の前の人物に目を向けてしまう。
「相変わらず、だな」
「相変わらず、ですね」
その視線の先にあるのは、省吾にくっつく勇司と、そんな彼に辛辣な言葉を投げつけながらも満更でもなさそうな顔をする省吾の、所謂バカップルの姿。
2人が付き合い始めて4ヶ月。
その過程に色々あったこともあり、最初こそ微笑ましく見ていた潤と紗弥だったが、さすがに毎日のように繰り返されると呆れが出てくるのも当然のことで。
そして、そもそも省吾のことが好きだった2人としては面白くないと感じるのも必然で。
「よし」
なにかを決意した潤は目の前のバカップルの片割れ、もとい省吾へと足を踏み出すと、
「おっはよー、省吾」
後ろから思いきり抱き付いた。
「うわっ!?・・・って、なんだ潤かよ」
「なんだとは失礼だな」
むー、と膨れる潤。
一般的に見ても決して低くない身長の潤だが、このような顔をしても違和感がないのは彼の性格から来る特権だろう。
「それは悪かったな。・・・ああ、藤森もいたのか」
「おはようございます、会長」
いつの間にか現れていた紗弥に、省吾は苦笑を漏らした。
「俺はもう会長じゃねぇよ。今の生徒会長はお前だろ?」
そう、つい先日行われた生徒会選挙で省吾は引退し、紗弥が生徒会長になっていた。
「そうですが・・・」
「勇司と潤みたいに呼べばいいじゃねぇか」
自分が会長になっても尚、“会長”呼びを止めない紗弥。
癖なのかもしれないが、どこか余所余所しい感じを受ける。
勇司や潤のことを名前で呼ぶようになったため、省吾にしてみれば、正直少し寂しい気もするのだ。
「すいません」
「あー、いや、まぁいい。そのうちにな」
謝られるとごり押しはできない。
なんだかんだで、省吾はこの後輩に弱かった。
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