版権の館

□いつでも本気
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12月24日、午後8時、白石宅。


「あー、何やめっちゃ疲れたわ」


ボスッとベッドに突っ伏す謙也に白石も、せやなぁ、と同意した。
部活の後、みんなでクリスマス会をしようと集まった白石宅は、それはそれは大変なことになった。


「金ちゃんの大騒ぎもバカップルがいちゃつくんも予想しとったけど・・・」

「いつものことなんやけどな。食いもんかかった金ちゃんも、クリスマスイブのバカップルも威力5割増やから」


ハハッと笑う謙也に、白石はチラッと目を向けた。
白石の疲れの理由は、謙也の言ったものだけではない。
財前光。
謙也を狙っているこの1つ下の後輩は、お祭り騒ぎに乗じて何かと謙也に引っ付いていたのだ。
その度に2人を引き離し、さり気なく牽制をかけていた白石の苦労はなかなかのものだ。
帰り際、小春にこそっと言われた、大変ね、の一言に涙が出そうだった。


「なぁ、謙也」

「ん?」

「財前にはあんま近づかんでや」

「・・・何でや?ちゅーか無理やろ、それ。俺、あいつとダブルスやし」


そう言われると何も言い返せないのだが、だからと言ってこのままにしておくのも不安だ。


「極力、でええから」

「・・・よくわからんけど、わかった」

「ん、よしよし」


小さな子にするようにポンポンと頭を軽く叩けば、俺は金ちゃんやないで、と小さな反論。
拗ねたようなその顔が可愛くて、せやな、すまん、と謝れば突然にかっと笑顔になる。


(まるで山の天気やな・・・)


もしくは秋の空。
くるくると変わる表情は見ていて飽きない。
そんなことを呑気に考えていると、


「なあなあ、白石」


いつの間にか起き上がっていた謙也が、ヘヘッ、と笑いながら手のひらサイズの箱を差し出してくる。


「何や?」

「へへへ、クリスマスプレゼントや。俺からの」


早よ開けてみ?

言われなくても、愛しの謙也からのプレゼントだったら喜んで開けさせてもらう。
包装紙も破かないようにガサガサと箱を開けると、


「うわっ!!」


中からビミョーンと顔と紙吹雪が飛び出す。
まさかのビックリ箱。
エイプリルフールでもないのに、こんな物を渡されるとは思っていなかった白石は言葉も出ない。
そんな白石に、悪戯が成功した喜びでニコニコしている謙也が言った。


「ほら、やっぱ大阪人やし?そこは一発ボケとかんとな!」

(いや、そこでボケる必要ないやろ!)


と言葉にはしないツッコミを入れる。
その代わり、なら俺も、と小さな小箱を差し出す。



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