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□一番近くで見える場所
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学生にとっての運命の日。
そう、日々の学校をつまらんと思っとる学生にとっても一大イベントとなる“席替え”の日や。
教卓とどのくらい離れとるか、窓際か廊下側か、前から何番目か。
そしてこれが一番大切なこと。
誰の隣になるか。
うっかりガリ勉タイプの隣になってもうた日には、少し話しかけただけで「勉強の邪魔すんな」みたいな目で見られる。
だからと言って、どっかの誰かさんのようなサボり魔の隣になるのも後が大変や。
「そいつの面倒はお前が見ぃ」とでも言うような教師からの視線が突き刺さり、案の定授業後やテスト前のノート係となる。(千歳のクラスのヤツから聞いた話や)
そんなドキドキ体験が手軽にできる席替えだが、実際に多くのヤツが思っとるに違いないことは「あの子の隣に座りたい」。
美人に対しては、男子が命がけや。
何か、そんな歌あったよな。
昔は、何をアホなことを、とか思っとったけど、最近になってその気持ちがよくわかるようになった。
なぜなら、
「白石、今日席替えやんな。今度は隣になれるとええな」
ニコッと笑いながら謙也が話しかけてくる。
そう、前回の席替えでは逃した謙也の隣を、今度こそは勝ち取ったるという思いでいっぱいやから。
「そうやな」
同じように笑いかけたと同時に、席つけよ〜、と間延びした声と共に担任が入って来た。
そしてホームルームの時間を使って始まる席替え。
方法は最もポピュラーなくじ引きや。
くじに書かれた数字と黒板に適当に書かれた数字を見比べ、歓喜の声と落胆の声が入り混じって聞こえる。
そして俺の番。
謙也は先に引いとって、数字は1。
俺が謙也の隣になるためには8か14を引けばええわけや。
そして俺の毒手が引いた数字は、
「謙也、やったで!お前の隣や」
8番だった。
「ほんま!?やったやん、白石。さすがバイブルやな!」
きらっきらした笑顔で喜ぶ謙也と思わずハグ。
後ろから、またやっとるわ、とか、あんま見せつけんなよ、とか言う野次と、これで白石に睨まれんですむわ、と言う今まで謙也の隣やったヤツの声が聞こえたけど無視や無視。
ちゅーか、何やかんやで公認なんは嬉しいわ。
周りの声なんか気にせず、
「お前ら・・・特に白石!ええ加減にせぇよ」
呆れ顔の担任にそう言われるまで抱き合っとった。
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