一般の館

□そんな始まりもありかもしれない
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「エジプト行きたい」

「はい?」

「と言うわけで連れてってください、川本さん」

「いやいや、意味わからないのですが、朝日さん」

「じゃあ中国でいいから」

「じゃあの意味がわかりません。て言うか、統一感0ですね」

「・・・・・・ケチ」

「いやいやいやいや、ホント意味わかりませんから」

「さっきから意味わかんないばっかだね」

「それはあなたのせいです。ってか、今度はなに。なんでエジプトと中国なの」

「いや、世界遺産見たいなー、って」

「ああ、なるほど」

「だから連れてって」

「だからなんで俺が」

「だって私学生だし。お金ない」

「それは俺も同じなんだけど。同じ学校行ってるのお忘れですか」

「武志なら貯めてると思って」

「あのー、清美さん?毎日毎日あなたに昼飯たかられてる俺にそんな金があるとお思いか?」

「・・・・・・・・・ああ」

「ホンットいい根性してるよなお前」

「それほどでも」

「褒めてないから。全く全然これっぽっちも褒めてないから」

「よし、わかった」

「・・・今度はなんですか」

「新婚旅行で行こう」

「ああ、いいですね・・・・・・・・・はぁ!?」

「ご祝儀入るから、お金の心配はいらないよね。と言うわけで、私と付き合ってください」

「・・・マジで?」

「マジで。本気と書いてマジと読むあの感じのマジで」

「完全に結婚前提ですよね」

「うん、そうだね」

「エジプト行くために結婚前提のお付き合いって、なんか悲しいのは俺だけですか?」

「細かいことは気にしちゃダメですよ」

「いや、細かくないよな。結構重要なとこだよな。って言うか、お前もそんな理由で一生を決めようとするな」

「むー」

「むー、じゃありません。今回は誰がどう考えても俺の方が正論言ってます」

「武志、なんか勘違いしてる」

「は?」

「私がエジプトのためだけにそんなこと言うと思ってるの?」

「かなり思ってます」

「失礼な」

「自業自得だろ」

「・・・・・・武志」

「そんな目ぇしても無駄。そんなのが幼なじみの俺に通じると思うなよ」

「チッ」

「お前今確実に舌打ちしたよな」

「そんなことより」

「無視かこの野郎」

「好きです」

「・・・・・・」

「エジプトのためとかじゃなくて、川本武志という人が好きです。だから私と付き合ってください」

「はぁ・・・。お前さ、ホントゴーイングマイウェイだよな。むしろ強引なマイウェイ?」

「おもしろくないよ、それ」

「うっせ」

「それはどうでもいいから、返事を聞かせてください」

「今?」

「今。待ったなし」

「俺が断ったらどうすんだ?」

「別にどうもならないんじゃない?ただの幼なじみ。私は今まで通り接するつもり。毎日お昼を奢ってもらったりね」

「いや、そこは幼なじみ関係なく止めてほしいんだけどな」

「たかだか百円やそこらのパンでしょ」

「それが毎日続くと大きいんだってそろそろ気づいてくれないかな」

「ケチ。ケチケチケチケチケチ武志」

「なんかすごい言われようだな」

「今度からケチタケって呼んでやる」

「なんつー不条理」

「で?返事は?」

「ホントなんだろうな。エジプト云々は関係ないっての」

「うん」

「・・・お前みたいなのと付き合えるの、俺くらいのもんだろ」

「ん、そうかもね」

「いいぜ。なんの偶然か、俺も清美のこと好きだし。付き合うか」

「エジプト前提だよ?」

「エジプトじゃありません。せめて結婚前提と言ってください」

「はーい」

「ったく、わかってんだかわかってないんだか・・・」





関係が変わって、一つの未来が決まった瞬間。





「とりあえず、明日のお昼はデザート付きで」

「ふざけんな」

「だって、彼女とただの幼なじみの違いつけたいじゃん」

「ダーメ」

「・・・ケチタケ」

「てめっ・・・!」





終われ
 

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