キミと〜シリーズ

□その後の彼ら〜昼〜
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「紗弥ちゃん、どうかした?」

「いえ、時々、本当に時々なんですけど、勇司先輩をぶちたいなって思うことがあるんですよね・・・」


今みたいに。

さらりと物騒なことを言って自嘲気味に笑う紗弥。
その表情を見た潤は、この4ヶ月気になっていた疑問を口にした。


「紗弥ちゃんはどうするの?」


唐突な質問。
おまけに、なにを、とも言わないものだったが、紗弥には伝わったようだ。


「・・・会長のことですか?」

「そ。このまま見てるだけ?」


はっきり核心を突くと、困ったように笑いながら、潤先輩もでしょう?と返される。


「俺はいいの。1回告ってるし、一応だけど付き合ってたし。でもさ、紗弥ちゃんは違うでしょ?」


紗弥の気持ちを省吾は知っている。
だが、紗弥が直接好きと告げたわけではない。


「成り行き、でしたからね・・・」


省吾もそれに関してはなにも言わない。
なかったことにしているのか、それとも忘れてしまったのかは定かではないが。


「不完全燃焼じゃない?紗弥ちゃん、そういうの好きじゃないでしょ」


潤の観察眼はなかなか鋭い。
図星を指された紗弥は、そうですね、と空を見上げながら呟いた。


「そろそろ、」


と、紗弥が口を開いた瞬間だった。


「悪い、遅くなった」


走ってきたのか若干息を切らす省吾と、平然といつも通りの笑みを浮かべた勇司が現れた。


「うわー、バテてるねぇ。運動不足?それとも、」


寝不足?

揶揄をこめた言い方をする潤を紗弥が小突いた。


「大丈夫ですよ、会長。私が早く来ただけですから」


にっこり笑う紗弥にそうか、と返すといつもの場所に座る。
勇司も省吾の隣りに腰をおろすと、手に持っていたビニール袋からパンとコーヒーを取り出して省吾に渡す。
その光景を見ながら、潤と紗弥も自分の弁当を開き始めた。






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