短編 夢見処

□いろはにほへと
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いろはにほへと ちりぬるを

わかよたれそ つねならむ

うゐのおくやま けふこえて

あさきゆめみし ゑひもせす





ある日の屯所での出来事…

昼食を済ませた総司が、部屋に戻ろうとして廊下を歩いていた時、視線の先に縁側に腰を下ろす葵の姿を見付けて声を掛けた…

「…あれ?葵ちゃん何してるの?」
「あっ、総司くん…これ…着物縫ってたの…」
「繕い物?」
「うん…土方さんの着物、肩口が綻んでたから…」
「へぇ…」
「ついでに繕う着物があったから、一緒にやってるとこ…」

葵の側には、数枚の着物が丁寧に畳んで置いてあった…今手掛けているのは、多分最後の一枚だろう…葵は器用に繕い物をこなしている…

「…葵ちゃん、手先が器用だねぇ…」
「…どうして?」
「これ…縫い目も綺麗だし、繕ったものには見えないよ…」
「そう…ありがとう総司くん…」
「…僕の着物も、繕ってくれるかな?」
「良いよ、持ってきてくれたら、今日中にやってあげる…」

葵にそう言われて、総司は部屋に戻ると隊服を一枚と普段着を数枚持ってきた。

「…これ、繕えるかな?」
「…斬られた跡ね…当て布があれば、何とか出来るけど…」
「そうかい?」
「後の着物は、すぐに繕えるわ…」
「…じゃあ、宜しく頼むよ…」
「うん、任せて!」

葵の笑顔に、総司はつられて笑ってしまった。

…こんな穏やかな気分になるのは、君の笑顔を見られるから…なのかな?君の笑顔は、僕だけじゃない、みんなを幸せな気分にしてくれる…そんな気がするよ…

〜終〜

後書き→総司の口調はちょっと難しいです(;^_^A 総司とヒロインは仲の良い友達みたいな感覚ですね…
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